INTERVIEW

044 TV Director「田中智人」

2007.07.18

     



    イ ン タ ビ ュ ー の あ る A . M .

    土曜日のSOSO CAFE。お昼前。数日前から急激に寒くなってきた。外の空気がとても冷たい。考えてみると 午前中のインタビューというのは珍しいかもしれない。今、世の中の夜は長く遅い時間もけっこうドタバタ落ち着かない雰囲気がある。でも早朝から続く午前中は静粛で美しく感じる。

    来年1月よりTVhにてクリエイターをテーマにした新番組「WHAM!」の担当ディレクター田中智人にインタビューしてみた。

    ここ数年、「クリエイター」というコトバは一般にも広く定着した感がある。ある種の「目新しさ」が失われている状況のなかで、クリエイティブを全面に押し出すのではなく「テレビはあくまでマス・メディア。だから、番組は誰にでも楽しめるエンターテイメントでなければならない」と言い切る彼のディレクションの「クリエイター番組」に期待したいし、この地札幌でのクリエイターの紹介の場として応援したい。
Shnichi Ishikawa NUMERO DEUX


NUMERO DEUX SPECIAL 044 WHAM!"Thats’s Entertainment"
Interview With Tomohito Tanaka(TVh)
取材日時:2002.012.7(sat) 12:00-13:00
取材協力:SOSO CAFE
Interview by NUMERO DEUX
NUMERO DEUX Copyright.

田中 智人(TVh制作部ディレクター) インタビュー

「クリエイターだけのための番組にはしたくないですね。TVというのはマスメディ アですから。エンターテイメントをやりたいです。良い意味で」

—–簡単なプロフィールと、今回番組の担当ディレクターとなったいきさつ教えてくれ ますか?

    僕はもともと東京の出身で、大学を卒業してマスコミ志望で就職活動をしてTVhに入 社しました。今年で5年目です。入社時は編成部にいて、そこで番組の買い付けとか、広報の仕事をしていました。 そこで仕事をしていて、自分としては、今までのTVhのスタイルを変えたいという気 持ちがあって、いろいろ考えていました。

    そのアイディアが具体的な形になった出来事 自分のその気持ちが具体的な形になったキッカケは、僕が担当していた時間帯の中に 午後のロードショーのオープニング映像というのがありました。これが、ちよっと今 の時代にこれはないだろう、という古臭いもので、これをなんとかしたかった。

    そして、友人を介して市内のデジタル・クリエイター系の専門学校の学生さんに映像を頼みました。そして、とても良いものができたんですよ。 これは結果的に、まだクリエイターのタマゴの学生さんが、マスメディアで作品を発表できたわけで、凄くおもしろいことじゃないか。いつか制作に移ったら、札幌の若いクリエイターの作品を紹介できるような番組を作りたいなぁと思いました。

—–「良いサイクル」を作りたい。
             

    同時にその経験で感じたことは、専門学校にいけば、いろいろな作品のコンテストの ポスターを見ることができます。でも、それはコンテストに応募する人には知られていても、一般 に人にはなかなか知られないのが現状で、内輪の中で発表しあっている 印象を受けました。これはよくないのではないか、と感じたのです。

    そこで、TV番組というマスメディアでそれらのクリエイターの作品を紹介すれば、エ ンドユーザーである一般の人から、または将来的なクライアントの目にもふれること によって、話題になったり、仕事にもつながるような「良いサイクル」が作れるんじゃないかな、と思いましたね。

—–企画がみとめられ制作部になって

    そんなことがあって編成部にいたときから、番組についての企画書を作っていたのですが、 今年制作部に移って、上からのゴーサインが出ました。 自分の発案で若きクリエイターを紹介する番組を制作するチャ ンスが与えられました。

    まず、やりやすいことからはじめようと最初はCMを作ろうと思いました。そのCMはTVhものでもいいのですが、できれば、どこかの企業がスポンサーになって、TVhが仲 介してクリエイターが作品を作れば、結果、先に言った「良いサイクル」が作れると 思ったのです。

    そこで、営業の人や、代理店の人にいろいろ探してもらったり、手さぐりでスタート しました。ところが、代理店経由で、高田屋、暖中、などの飲食店の展開で知られるタスコシス テムが、クリエイターを紹介する番組のスポンサーとして興味を持っているという話が来ました。

    番組の内容のプレゼンをすることになって、学生クリエイターがタスコのお店になん らかの形で関与する企画をやりたいと思いました。

    無難なところでは、飲食店ですか ら、調理系の専門学校の学生によるメニューの提案とかが思いつきますよね。でも、 僕はどうせなら、タスコの飲食店の店舗デザインを、いくつかの学生チームで対抗してプレゼンで競ってもらう様子のドキュメントという内容を提案しました。

    すると、それがとおってしまって、思いもよらないビックスポンサーがついて、しかも学生に店舗を作らせるという大企画をやることになって、嬉しい反面 。もの凄いプ レッシャーですよ。まかせられる店舗も途方もない物件なんです。このあたりが、番組の企画が具体化されるまでのいきさつです。

   
Design by extract

—–では、具体的に番組「WHAM!」の構成を教えてください

    はい。1月13日(月)より0時4分から45分までで、週1回CMを除けば正味30分の番組です。

    内容は、まず、先に紹介しました「デザイン・レストランプロジェクト」で、これはメインにな りますね。 この企画の原点は、例えるなら「ガチンコ」か「浅ヤン」なんです。それは、僕はマ スに対してアプローチは重要だと思っているので、この番組は若者のエンターティメ ントとして作っていきたい。同時にチャンレンジ精神を煽るようなコーナーにしたいですね。

    「FACE」では市内の自立して仕事をしている人たちをとりあげます。第一回は若手女性フォトグラファーの予定で、若者がリアルに感じさせる存在を紹介します。

    「タワーレコードのコーナー」もあります。店員さんに今流行っている説明してもら うものではなくて、店員さん自身が好きで、推薦できるものを紹介してもらうコーナー にしてもらいたいと思ってます。重要なのは、メジャーな流行を説明してもらうことは ない。ありきたりはない店員さん個人のこだわりを教えて欲しい、と頼んでいます。

    「ポピーザぱフォーマー」というアニメを放映します。これは東京で制作されている 番組 なんですが、あえて本番組内でやる理由は、もし単独で放映するとすれば、深夜のか なり後ろのほうでしか放映できないからです。僕は番組すべてをローカル制作にこだ わるつもりは全然ないしおもしろい番組を観やすい時間帯で提供することも重要だ と考えています。

    「イメージガールポスターコンテンスト」これは一般募集したイメージモデルの写 真 を素材にポスターをデザインしてもらう企画です。応募作品は、サイトや番組などで 紹介され、投票してもらいます。そこで、優秀な作品には実際のポスターとしてリリー スする予定です。


デザイン・レストランプロジェクトでプレゼンをおこなう学生クリエイター

     

—–では、最大の目玉、「デザイン・レストランプロジェクト」 についての制作の様子を教えてくれま せんか? 制作の最初からお話しますね。

     

    番組の企画がスポンサーよりオッケーが出たのが、1 1月なんですよ。1月スタートの番組のメイン企画が、そこから制作スタートすると いうのは通常考えられないのですが、いろいろ事情があって、やることになりました。

    とにかくチャンレンジする学生クリエイターを集めなければなりません。 もうある番組なら、その中で告知すればいですが、それはできないし、今から募集チ ラシまいて回収して判断する時間もない。もう自分たちスタッフ計3人で走りました ね、凄い話ですよね。

    そこで、結果、大学、専門学校の学生さんが。3名1チームで6チームが本企画 で、タスコにプレゼンをしてもらい最終的に1チームもデザインが採用されて本物の レストランがオープンする訳です。


デザイン・レストランプロジェクトで学生クリエイターがデザインのアイデアを落とし込んだ模型

    11月末の収録で、タスコ側から、1次課題として「コミュニケーション・レストラン」 というキーワードから連想する店舗コンセプトの提出」が求められました。

    現在学生チームは2次課題に取り組んでいますが、当然のことながら、いくつかのチームは姿を消しています。課題の発表から提出までの期間がかなりタイトなため、どのチームも合宿状態で取りくんだようです。

    デザインのアイデアを落とし込んだボードや模型が登場し、そのクオリティの高さには目を見張るものがあります。 課題の発表は、タスコ本社の会議室でおこなっています。

    タスコの本部長と、設計会 社の担当者を相手に学生グループのやりとりはまさに「ガチンコ」という感じで、見 応えのあるものだと思います。 現場は楽しんでやってます。編集作業はプレッシャーですけどね。

    今の学生はヤル気 のないようなイメージがあるかもしれません。でも、違うと思います。誰かがしかる べき機会を与えてやれば凄くやれるんですよ。 僕は彼らにこの番組を利用して欲しい。今後社会で出たときに、この番組に参加した こと履歴書にくっつけて就職活動に役立てるぐらいのことをやって欲しい、といって います。

    次の収録では2次課題にとりくむ姿も撮りたいですね。ただ、平面図を書いていると か、パソコンを操作している姿を撮っても、そんなのはみんな同じですから、やって もしょうがいない。 タスコの店に研究に行くチームがあるなら、その様子を撮影したり、海外の資料とか を調べているような様子や、話し合いのなかでケンカしているような部分もとらえて いきたいですね。



—–番組制作についての基本的な姿勢を教えてください?

    こだわりたいのは、なによりも人間的な側面をテレビで伝えていきたいんです。プレゼ ンの内容を詳しく紹介するより、学生とタスコの担当者とのガチンコなやりとり観せ たい。

    怒りや、喜びや、悲しみのリアルなドラマによって、「クリエイター番組」と いう看板が不用な観ごたえのあるものにしたいんです。 地場の学生が地場の企業で作る企画だから地元の人にも親しみやすいですよね。

    「WHAM!」はエンターテイメントだけど、意義のある美しいことだと思う。この番組を 通じて、学生クリエイターと企業がつながったりするのを期待しています。

—–田中さんは、そのスマートな外見から、これだけのパワーはどこから来るのだろうか?

    自分が楽しいからですよ。それだけですね。 それに札幌ってとても魅力的な街なんです。僕はもともとここの人間ではないので、 よくわかるのですが、道外の人に「札幌」のイメージって凄くいいんです。東京のク リエイター関連の人にも「札幌好き」の人って多いですよね。

    現実には、経済の空洞化かとか、不景気とかで、新しいことをやりたければ、「やっ ぱり東京じゃないと」という話もよく聞きますが、僕は「ますます札幌でいいじゃな いか!」と思っています。札幌に住むみんなが愛着を持てるような番組を作っていき たいですね。

     

     

「WHAM!」(ワム!)   
2003年1月13日(月)スタート。毎週0時04分〜45分
  (協力) DIGITAL HOLLYWOOD ,札幌デジタル専門学校, 札幌デザイナー学園 ,道都大学 ,北海道東海大学,テレコムセンター(順不同)
(★2007.9.1-現在放送終了)

TVh website                           http://www.tv-hokkaido.co.jp/

   


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