INTERVIEW

055 アーティスト[高木正勝]

2007.07.29



最近では、デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアーへの参加や、UAのミュージックビデオ制作、デザイナーの皆川明、ダンサーの上村なおかとのダンス作品を制作。そして、2004年9月、4年間のソロ活動の集大成的作品「COIEDA (コイーダ)」をリリースした京都在住の映像作家/ミュージシャンである高木正勝(1979年生)。11月「あけぼの美術企画」主催による「あけぼの土曜美術学校01」のレクチャー&パフォーマンスのために札幌を訪れた高木正勝にインタビューをおこなってみた。
Text by Shinichi Ishikawa.

NUMERO DEUX SPECIAL 055 New and is nostalgic.
Interview with Masakatsu Takagi
取材日時:2004.11.22(mon) 20:00-20:30
取材協力:あけぼの美術企画S-AIR
取材場所:旧曙小学校教室
Interview & Photograph by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)

● 高木正勝インタビュー

—-イントロダクション/ライブについて

ライブという形式を採る際は、純粋なミュージシャンという立場ではなくて、あくまで自分のやり方で出来れば、と思っています。ライブの時は、その時の感情をそのまま出したいと思っているので、出来るだけ演奏する様にしています。ライブでは既存の曲の再現より、その場限りの即興をやりたいと思っているのですが、演奏、作業を僕一人でしなければならないので、完璧な即興ライブというのは、中々難しい状況です。予めプログラムを組んでいる部分もあります。今回の会場である旧小学校にはピアノがあるので、使ってみたいと思っています。ライブ中に新しい演奏の仕方等を発見をする事もあるので、楽しみです。

—-写真から、映像そして音楽へ

ピアノを中学、高校と習っていました。当時は、音楽の仕事が出来たらなあ、とぼんやり思っていましたが、大学に入る頃にはすっかり忘れて、写真をやり始めました。ポーズをとっている写真が好きではなくて、日常の動きの一瞬が捉えたいと思っていました。自分が気持ちよく感じる一瞬を探すのなら、カメラよりもビデオで撮影して、そこから選んだ方が良いんじゃないかな、と思ったので、ビデオカメラを使い始めました。そのうち、色をいじったり、加工もするようになって、今の作品に繋がっています。そういう流れなので、他の映像の人とは映像作品の捉え方が違うんじゃないかな、と思う時はあります。基本的に、自分の望む「ひとコマ」のために映像を作り始めて、そこから全体の構成や動きを考える事が多いです。逆に動きで表現する所からスタートする場合は、ひとコマの見え方は考えないですが。

はじめの頃は、他の人の音楽を自分の映像に使っていました。そのうち、自分で音楽も作った方が作品の自由度が上がると思って、両方作る事になりました。いざ、曲を作ってみると、難しいと思っていた作業が意外と簡単に出来ました。最初の頃は、本当に映像と同じ方法論で音楽を作っていました。映像を作成するソフトで曲を作ってましたが、どちらも時間軸に沿って作るものなので、音も映像も一緒の感覚で作れたんです。最近は、音楽独自の方法論も出来てきたので、逆にそれを映像に活かせたりもしています。例えば、映像制作に煮詰まった時に音楽を作り始めると、新しい発見があって映像に活かせたりします。いつもひっきりなしに何か作っていますが、ひとつの作品が終わると、今度は違うタイプの作品が作りたくなります。以前は、どちらかというと映像に重点を置いていた気がしますが、今は、どちらかがリードしていく形で、止まっている方を引っ張ってくれている感じです。

自分の好きな映画とか映像で憶えているのは、ストーリーよりも、一瞬のシーンだったりします。それも、必ずしも映画の中で重要なシーンではない場合が多いです。エネルギーが伝わってくる様なシーンが好きですね。これは、激しいという意味ではなくて、たとえ静かなシーンでも、エネルギーが伝わるものが好きなんです。

—-表現の姿勢について

個人的に、誰の作品に対しても、作者の思いや考えが感じられるものに出会いたいと思っています。ただプライベートな部分を外に出す、という事ではなくて、それも含めた世の中をどういう風に捉えているのか、というのを見たり聞いたりしたいと思っています。そういうものを求めているので、自分が何かを作る際も、同じ様な事が出来れば良いなと思っています。自分なりの考えや表現方法というものは突き詰めていくと、それが突出した個性になったりオリジナリティーになったりするのですが、それは他の人には理解が出来ないものではなくて、逆に多くの人と共有出来るものになると思います。そういうものに触れてみたいと思うし、自分でも生み出せれば、と思っています。

—-表現へのアドバイス

今回の札幌でのイベントの様にレクチャーをする機会は結構あります。世代が近い方の中には、自分と同じ様にコンピューターを持っていて、何か作りたいと思っている方が多い様です。少しでも何かの役に立つと良いな、と思うので、結果の話だけではなくて、プロセスの話もする様にしています。

ものを作る時に、作品を見てくれる人を想定するのは、良い事だと思います。それは、100人とかそういった規模ではなくて、身近な人で、親とかでも良いと思います。それと、なぜ人に見せたいのか、というのを考えた方が良い気がします。自分で作って、それだけで満足出来るのであれば、見せなくても良いと思うんです。(そういうのに限って、名作が多いと思いますが。)もしくは、「自分はこんなに出来る」という思いが強すぎる作品は、見る人に不快な感情を与えてしまうだけだと思います。外に出すのなら、たとえ、クオリティーの部分で問題があっても、そういうものを通り越して、人に伝えたい、伝えるべきと思うものを作りたいと、僕は思っています。

—-来年(2005年)にむけて

この2年(’03-’04)はCDのリリースが相次いだので、ミュージシャンとして紹介される事が多かったのですが、もう一度、自分をリセットしたい気分です。なので、今までとは違った環境になったら良いな、と漠然と思っていたのですが、不思議な事に、自然とそういう環境が向こうからやって来たりして、心境、環境ともに整って来ている感じです。その中の一つには、自分の映像をもう一度美術館で見せたいな、というのがあります。単純に自分の作品を出したい、というより、自分の映像を美術の世界で見せる事に意味があるんじゃないか、と感じるからです。思い込みかも知れませんが(笑)。

after Hours
元小学校の教室という場所で、電源の関係で間接照明の中での取材は、なんとも不思議な体験だった。高木正勝は決して饒舌なタイプではないが、ひとつひとつの質問に丁寧に答えていただいた。終始、礼儀正しく、柔らかな言葉使いのなかのに時折アーティストらしい鋭さが感じられ、そして自然体であった。


INFO
高木正勝/COIEDA
2004/9/8 on sale/CD+DVD
3,990(tax in.)MTCD-1042
W+K東京LAB WKM 005 / felicity cap-41
http://www.takagimasakatsu.com/

 


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