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NEWS No.17046「SAIF (札幌国際芸術祭) 梅田哲也『わからないものたち』」

2017.10.21

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札幌国際芸術祭
私的な感想。デパートの残りにある記憶と作られた空間。
僕のみたいものがあった。

札幌国際芸術祭は、札幌市が主催する芸術祭である。今年で第二回目を迎えた。僕は札幌という都市で芸術祭をおこなのは難しいと思っていた。それはなぜだろう? 思いながら、うまく文章にできない。それを文章にしようと思う。札幌の中心部は、大通公園をはさんで、銀行や証券会社や商業施設や、北最大の繁華街すすきのにつながる。このあたりの文化的な施設としては、大通公園、札幌時計台ぐらいかなという感じがする。大通公園は通年さまざまな行事がおこなわれているが、アート表現とは少し違う感じがする。でも、大通周辺は、まさに札幌の中心であり、芸術祭をやるならこのエリアでやることが必須だと思う。一番人が集まり、流動性のあるところがいいだろう。

今回の芸術祭では、その部分が初回より強化されたのがとても良かった。札幌市の郊外には「モエレ沼公園」や「札幌芸術の森」といった、国内でも有数のアート施設がある。しかし、これらにいくらスペシャルな展示おこなっても「芸術祭」にはならない気がするのだ。美術施設ではない、場所でアート展示をする、というのは今ではありがちテーマではあるが、札幌という場所では特にその点を強く意識しないといけない。ないところに一定期間ある異空間が「祭り」だと思うから。

金市館という デパートが昔あった。過去形であって3年前にデパートという形態は閉店した。現在はパチンコ店であるが、1970年代からある札幌中心部にある代表するデパートのひとつであった。デパートといっても、丸井、三越のような、高級ブランドを取り扱い、というよりも庶民的で手頃な商品が集まったデパートであり「デパ地下」の食料品エリアも、日常の買物をするような品揃えであった。それでも8階建ての立派な建物であり、各階が「婦人ファッションのフロア」「インテリアのフロア」といったふうに、キチンと分けられていた。

8Fの特設会場では、よく「古本市」や「中古レコード市」が定期的におこなわれていたのでよく足を運んだ記憶がある。また、同じフロア常設は「フィンランドインフォメーション センター」というフィンランドを紹介しているコーナーがあって、これはとても文化的な香りのするとろこで、情報も更新されていてよく見た記憶がある。昔話をしすぎたかな。なにかがなくなっても記憶は残る。そこを僕は必要以上に大切には思わない。でも、自分を構成する一部にはなるのだ。

梅田哲也の作品「わからないものたち」は、この金市舘だった建物の現在は使っていないフロア7階300坪の空間を使った作品である。そこは、昔はたしか健康関連のフロアで、何度か行った記録がある。そして、現在。入ってみるとその面影は一切ない。すべては運び去られ、剥がされた。残るは骨組みだけの空間。あるのは「ここ」にあるとう地理的事実だけ。でも、アート作品になるのはその事実だけで十分だ。

がらんとしてむき出しの空間の中に、廃品や不思議な実験機器のようなオブジェがある。全体の空間がインスタレーションになっていて、まるで前衛的なSF映画のセットに迷い込んだ気分になる。現実に戻されるのは、窓からの風景。そこにはみたことのない札幌の空間がみえる。それはそうだ。このフロアがデパートの頃、窓から外を見た記憶はない。

僕はその時、札幌の中心部にいた。でも、そこはあまりに不思議な空間だった。都市の真ん中にある。なにも売っていない、サービスもない空間。想像力が楽しめるフロア。そして、窓から見えるいつも札幌。そうそう、僕がSAIF札幌国際芸術祭で見たかったのは、こういう作品なのです。

ishikawa
Text by  メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

 


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