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Numero Review Buffalo'66×3

低予算のインディ・フィルムながら、パルコなどの宣伝効果のためか、えらく盛り上がった「バッファロー66」。そのため、「単なるオシャレ映画」と誤解を受けないようにその本質を鋭くレビューしてみました。

"Buffalo'66"
ヴィンセント・ギャロ主演・脚本・音楽を手懸ける、デビュー作。(1998/アメリカ映画/113分/カラー/主演 ヴィンセント・ギャロ、クリスティーナ・リッチ)ストーリーは、主人公は5年間の刑務所から出てきて故郷にむかう。両親には「自分はいままで政府の仕事をしていた」と嘘をつき妻を仕立てるために途中で女の子を誘拐する。




"Buffalo'66"

演出とか、編集とか、はっきり言って上手じゃないんだけど、表現への欲求がストレートに出ていておもしろい。

映画の中で効果的に使われていた「小窓演出」だけれど、ずっと過去の思い出を描写するために使われていたのが、最後の襲撃シーンだけ、未来への幻視となっている。そして、自分の死と、それに対する両親の反応を見たことで、大ハッピーエンドに転回するのだが、このシークエンスにおけるテーマの昇華は、見事としか言いようがない。

そう、レイラが、過去しか見えなかった彼に与えた力こそが、「未来のビジョン」を見る力なんだろうね。魔法という意見があるのは、頷けます。

text by ken kawano


"Buffalo'66"

好きすぎて、そしてグッとくるところがありすぎて、どうコメントしていいものやら……。

人間誰しも、他人に対してちょっとした見栄を張ってしまうことってあると思うんですが、この作品の主人公・ビリーの場合、「政府の仕事で遠くに行っていた」とか「昔の女だ」とかいった見栄は、寂しさや絶望感や自分に対する自信のなさを封じ込めようとする、哀しい手段なんですね。その糸がぷっつりと切れて、トイレで嗚咽する彼の姿を観ていると、泣けて仕方がありませんでした。そして、そんなことはお見通しで、彼を大きくあたたかく包み込むレイラといったら。クリスティーナ・リッチ、素晴らしすぎ。

この作品、 私のまわりでは「すごく好き」という人が多いのですが、人によって気に入りポイントはさまざまみたいです。ある人は、ビリー=ギャロの可愛らしさに対して、またある人は、劇中で使われたイエスやキング・クリムゾンの曲の絶妙さに対して……といった具合。知人に薦めたら、「ああ、あのおしゃれな予告篇の、いかにも渋谷系っぽい映画でしょ」と言われたんですが、そんなんじゃないぞっっ!

text by RINRIN


"Buffalo66"

この作品を語るなら、いくつかの「老人」の出演するシーンを指摘する必要がある。

それはトイレの場所をたずねるおばあさん、ボーリング場の男、レストランの席の案内係、そして、ラスト直前のココアとクッキーを買うお店の店員。それらのシーンではギャロは老人達にひかえめな優しさをこめながら接する(時には甘えながら)。特にレストランのシーンで、メニューをブン取って勝手に席に座るカップルとは非常に対象的に感じることができる。

別に、ギャロが老人に親切だから、実はイイ奴なんだ、といいたい訳ではない。両親の愛を受けることができないギャロはその飢えた愛情を老人達にむけているのだ。それは、優しさというよりも、自分のバランスをとるための数少ない手段なのだ……なんて批評ぽく書いたが、他人とは思えないギャロのキャラクターに、また映画のなかに「同志」を見つけることができた。

text by Shinichi Ishikawa


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