NUMERO DEUX UROTANGE

UROTANGE DISC REVIEW 19 October.2001


"URO"は札幌の音楽情報発信グループ。おもな活動としては、フリーペーパーの発行や、毎週月曜21時より音楽情報プログラム「週刊U-ROCK(ウーロック)」を FMラジオカロス78.1MHzにて担当。2001年8月よりグループ名を"UROTANGE"がら"URO"(ウーロ)にあらためました。









THE CHARLATANS / WONDERLAND http://www.thecharlatans.net/

「もう少しやり方を考えたほうがいい/コミュニケーションをとらないとね/わかっているはず、ショットガンなんて必要ない」―ザ・シャーラタンズ「ショットガン」より。今語るべきことはアメリカ同時多発テロにおけるイスラム原理主義の非ではない。世界はテロとアメリカの報復に関して血の色に染められてはいるが、ここには何のポジティブさも介在しない。多くの人命を失った悲しさは怒りに転換するが、今のままでは怒りのままそれが持続するか、また悲しみへと帰結するだけだ。加害者側もまた実行犯は愛する家族に今生の別れを告げ死への恐怖を飲み込み、旅客機へと登場したのである。<人種・宗教問題は永遠の課題><むずかしいですね>などと言う人は多いが、それ以上の深みへと挑戦する者は少ない。シャーラタンズはさらに歌う。―ラヴ・イズ・ザ・キー―。行動には苦痛が伴うだろう。しかしその長い旅路の終わりは、必ず、“ワンダーランド”へと続いている。(城山)


JAMIROQUAI / A FUNK ODYSSEY http://www.jamiroquai.co.uk/

たいして暑くなることなく終わってしまった2001年札幌の夏。けれどもこれからの秋冬は、ジャミロクワイの新作で部屋の温度をグッと上げていこう。そう、99年に発表された『シンクロナイズド』に続き、この5作目も往年のディスコの匂いが存分に感じられる内容なのだ。先行シングル「リトル・エル」を聴けば、誰の頭の上でもミラーボールが輝き、まるでダンス・フロアにいるような気分になる。ジャミロクワイといえば、唯一無二の“ネイティヴ・ファンク”なバンド。アメリカやオーストラリア先住民の精神を取り入れつつ、ジャージー&ソウルフルな演奏を得意とし、宇宙へ飛んでいった強者たちだ。それがこの度、地球と宇宙を行ったり来たり、アラブ〜スペイン〜インドといった国々を彷佛させるボサノヴァにも挑戦している。35人編成というオーケストラ&美しいストリングスやホーンを起用するいっぽうで、コンピュータによる打ち込みも大幅に導入。10年の歴史はダテじゃなく、ジャミロは確実に進化している。(玉手)


GARBAGE / BEAUTIFUL GARBAGE http://www.garbage.com/

日本ではプロデューサーという言葉が、モーニング娘。に対するつんく、安室奈美恵に対する小室哲哉といった人々によく使用される感がある。間違いではないが、履き違えて欲しくないのは、彼らは音楽をプロデュースする立場の人間ではなく、ある人や物をトータル的にプロデュースする立場の人間であるということだ。ここには大きな差異があり、アーティストという人間を尊重する僕にとっては、前者の方に敬意を払っている。ブッチ・ヴィグという人をご存知だろうか? あのニルヴァーナの出世作『ネヴァーマインド』をプロデュースした人だ。ニルヴァーナにはカート・コヴァーンというカリスマが存在し、トータル的にプロデュースする必然性など存在しない。彼ら持ち前のエモーショナルなサウンドをほんの少しだけ分かりやすくプロデュースした結果があのヒットヘをつながったのである。アーティストの持ち味を殺さず、足りない部分は補い、また長所は活かす職業。それが真の音楽プロデューサーの仕事だ。造りだすことが仕事ではないのである。ブッチ・ヴィグはスマッシング・パンプキンズの『サイアミーズ・ドリーム』など数々のオルタナティヴ・ロックの名盤をプロデュースした後、94年に自らバンドを結成した。通算3作目で感じるのは現在の彼はまだ、現役バリバリのプロデューサーなんだなぁということ。デジタルロックを展開した過去2作と大きく変わりメロディー重視な楽曲が増えた理由にはバンドのボーカル、シャーリー・マンソンの影がある。彼女の存在が今ではバンドの中心となり、彼女をプロデュースすることによりガービッジは進化を遂げたのだ。そう、今作の変化はブッチ・ヴィグというプロデューサーが、シャーリー・マンソンというアーティストを活かした結果なのである。これこそプロデューサーバンドの強みなのだろう。(児玉)








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