NUMERO DEUX SPECIAL 010 JAN.2000


010 JAN.2000."PROJECT CAD - Drive to 2000"
interview with PROJECT CAD



(INTRODUCTION)

今流行りのVJではなく

今回の取材をお願いしたPROJECT CADは今流行りのDJ/VJ集団のような強力な個性を持つヴィジュアル・アーティストというよりも、彼らの目的は「意味のある空間」をつくり出すことであり、VJ/DJというのは、それを実現するためのひとつの手段にすぎないように感じられる。G4という強力なコンピューターが、20万前後でゲットできる現在、彼等のような空間についての 「思想家」(同時に実行者)が、一番必要ではないだろうか。

text by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)


(INTERVIEW)

(1)PROJECT-CADのメンバー構成/目的等を教えてください。

メンバーは室蘭工業大学で建築を専攻した6名(大塚、亀井、川角、北川、大森、石田)と文化女子大室蘭短大でデザインを学んだ2名(宮本、みき)の計8名で構成されています。大学、短大在学時に知り合い、当時からテクノロジー、アート、デザインをキーワードにした議論をしていました。議論の題材は、音楽と都市、機能美、サイバースペース等々、議論を突き詰めていく中で悩みつつも、表現を止められない仲間が集まったのが、Project-CADというユニットです。このユニット名のCADは「Connect Art with Design」「Communication AgainstDistance」のダブルミーニングを持っています。前者は空間に対しての僕たちの姿勢、後者はインターネットという新しいテクノロジーを使ったユニット間の姿勢というわけです。空間というものは様々なメディアがミックスされた総体だと僕達は考えています。そこには建築という即物的な事象のほかに、音や光、温度、香り、そして時間。つまり空間と呼ばれる概念に付与できるすべてのものをオーガナイズしていこうというのが、僕達Project-CADの目的です。

(2)札幌で去る12月におこなった"S P E C T R A millennium 2000"について教えてください。

世紀末思想と対にある楽観的なテクノロジーへの欲望。メンバーみんな楽観的な気分の持ち主ですので、直前まで来ている千年期の節目をみんなで気持ちよく迎える場を作りたいと思ったのが最初の動機です。ただ、イベントを主催するのにクラブ帰りのあの何とも言えない寂しさは感じてほしくない。従来の音で埋めてしまうクラブ空間ではなく、時間の流れ、シークエンスを感じられるもの、そのためにSPECTRAという抽象的なストーリーを空間に付与しようと考えたわけです。SPECTRAとは光のスペクトルという意味でプリズムなどを使った際に現れる光のグラデーションのことを指しています。そのグラデーションを構成する7つの色を来てくれた人の色としてイメージし、時間軸に沿って並べる。そして、最後にはすべての色をMixし、白というピュアな色に帰結するというストーリーとしました。イベント中はダイレクトに反応が伝わってきて非常に緊張感がありましたが今はすごくやってよかったと感じています。

(3)VJの映像を作っているハード/ソフト環境を教えてください。

HARDWARE
Apple PowerMacintoshG4 (400MHz)
SOFTWARE
Adobe Illustrator 8.0
Adobe Premiere 5.0
Adobe Photoshop 5.0
Adobe AfterEffects 4.0
Macromedia Flash 4J
Motiondive2

環境は基本的にマックです。G4にDVやデジカメで撮りためたネタを採取、アドビのPremireで切り張りした後、様子を見てAfterEffectsで編集。タイポ系MacromediaFlash、もしくはIllustratorファイルをAfterEffectsでモーション化。3Dはストラタビジョンで動きまで作り込みます。今回はビデオなどに落とさないでフルデジタルでやりたかったので、容量が大きくなりましたが、全てのネタを使い切った訳ではありません。曲やそのときの雰囲気を見てセレクトしていかないと流れが作れないので、余裕を見る必要がありました。VJソフトのメインはMotiondive2ですが、時々トラブルを起こしてしまうので、バックアップ含めてG4が3台をソースとして、それをスイッチャーでコントロールしました。曲の展開に合わせて、映像をバッサリと切り替えるためにもスイッチングの役割は大きいです。慌ただしい現場使用に耐えられるアプリケーションは現時点でありませんのでフルデジタルでヤルのためにはリスクを回避する構成をどう取っていくかがキーポイントとなります。精度の高いアプリケーションが現場の中で生まれてくる動きになれば、もっと発展していく可能性を秘めていると思います。

(4)メンバーはそれぞれ本職をもっているようですが、制作はどのようにおこなっているのですか。

基本的には各メンバーが夜中に睡眠時間を削る形で自宅で製作しています。一人でこだわり出すと死に目にあいますので、納得できるクオリティーを保つにはやはりお互いの意志疎通が必要不可欠です。実際会って議論する機会は殆どありませんので、インターネットがやはり重要なコミュニケーションツールとなっています。時間が前後していても伝えたい内容があるときはメールを、全員で意見交換する必要がある時はチャットを、もちろんもっと密度高く話す必要があるときはケータイをといったようにみんなで意識的にメディアを使い分ける様にしています。ムービーなどのファイルをネット経由でやり取りするのは容量が大きいため難しいのですが、ショックウェーブフラッシュは軽く扱えますので、イメージを伝えるためのファイルはメールで送ることができます。ただ、クイックタイム化されたものはCD-Rに焼いて、原始メール(郵送)で送ります。でも、やはりお互いに顔をつきあわせてないとイメージやアイデアが飛躍してこないので、月に1,2回会って議論をします。普段抑圧されている分、会って話している時はホントに濃い時間が作れるので、思ってもいなかった事がポンと生まれ出る感覚をみんなで大切にしています。

(5)VJ画像は「色」についてのコセンプチュアルな内容なものでしたが、 このアイディアはどこから?、またこれは今後も継続されるのでしょうか?

東京などでもVJと呼ばれるシーンが活発になっていますが、格好いい映像をランダムに使い回して流しているだけ?という疑問もあって、コンセプトを仕組む事で流れをつくる事を考えていました。色のコンセプトの内容は前述しましたが、空間をデザインする上で光というものは常に意識している要素でもあります。映像もその内容自体やテクニック的な部分に主眼を置くのではなく、光の状態や動きについて、どのように構成していくかが興味の対象となっています。光や物質がもつ色も感情や気分とに関わっていますので、それらをコンセプトの前面に出す形で「色」をテーマに扱いました。色はその波長によって特性を示しますが、それをイメージの起伏として時間軸上に配置するというのがアイデアのポイントです。 さらにそういったコンセプトをこの札幌やその空間自体が持っている特徴と結びつけることによって、作品としてパッケージされ再生されるだけではない、生身のストーリやシークエンスとして展開していけたらとおもいます。2月には新しい仕掛け・コンセプトのVJイベントを開催する予定ですので、今回来られなかった方々には是非来ていただきたいと思います。

(6)メンバーの好きなものを教えてください

・大塚 達也 札幌在住 好きなもの ハイネケン、サッカー、ザンギ、、、。(お やじっぽいなあ、、、)
・亀井 渉  札幌在住 好きなもの アップルのプロダクツ、竜安寺の石庭、砂原良徳
・川角 真也 函館在住 好きなもの 主張し過ぎないクールなフォント 飛行機( 大空は男のロマンだ)
・北川 譲  札幌在住 好きなもの UFO、モンドグロッソ、コーヒー、kyoto jazzmassive
・大森 聖  札幌在住 好きなもの 苦いコーヒー、余白(デザインとして)、暇 じゃないこと
・石田 勝也 川崎在住 好きなもの ファンク、ハービーハンコック、カラムーチ ョ(永遠のスナック)
・宮本あゆみ 札幌在住 好きなもの イタリア語、Marco Zanusoのチェア
・みき    川崎在住 好きなもの 倉俣史郎、ジャックピアソン、温室
(7)それでは、最後に今後の野望など

空間をつくろうというのがコンセプトですが、空間という言葉はホントに広い意味を持っています。資産としての建物を立ち上げることが空間を作るという古典的な事実は間違いないのですが、もっと意識を広げて、空気や磁場をを生み出すことも「空間の体験」として当然成立しうるわけです。そこでは、物理的な素材やディテールも要素ですが、これからさらなる発展をとげるコンピューターも単なる2次的なツールとしだけではなく空間を生み出すため入出力であり、そこには音楽や光、環境、映像、ピクトグラフィーやタイポ、温度や香りなどが介在し、空間と時間の流れ(シークエンス)を構成し、デザインとしての領域を広げることができればもっとエキサイティングな状況を生み出せると考えています。この新しいシーンのなかでは、有機的な人、もの、事のリンクが大切だと思いますし、関係性のデザインと呼ぶことができるかもしれません。これは、無数にある要素をセレクトし、構成していく流れ作業にデザインをとどめておくのではなく、想像以上のポテンシャルをもつ時間と場所が発生する可能性が秘められています。いま進行しつつあるテクノロジー、非テクノロジーを含めたデザインのムーブメントはすでに一過性の物ではないと感じますし、そのような流れの中でproject-cadもリンクを構成する要素として活動していきたいと思います。

 PROJECT CAD - more infomation

Web - http://home.highway.ne.jp/wkm/
E-MAIL - wataru kamei







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