NUMERO DEUX SPECIAL 022

INTERVIEW with TMVG
TMVG 常磐響&水本アキラ インタビュー

クラブ・ミュージックにハマれない人に聴いてほしい。TMVGは1999年に結成された常磐響と水本アキラの2人によるDJユニット。この2人は「音楽に詳しい」のは間違いはないが、それぞれグラフィック・デザイナー、フォトグラファー、エディター、ライターなど別の仕事もこなしていてもいるのがおもしろい。そういう 「本業ではない」(なれない)という姿勢でエンターテイメントを提供するためならDJの美学は棚に置く。意識的にノン・ジャンルに取り組み結果的にクラブイベントでは、クラブ好きから、そうでもない人まで大盛り上がりの雰囲気を作りだしている。それが一番大切なことではないだろうか?

inteview by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)
Photograph by Asami Hosino




1.SAPPORO --- 札幌について

札幌は、余談みたいな部分で居心地が良い。


常磐響(以下■) 札幌は4回目。来た時は、市内の古本屋をまわりますね。レコード屋はあまりいかない。そして、イイ感じの喫茶店にはいって、そこで飛行機までダラダラしている場合が多い。買った本をチェックしたり、ダメーな話しをしたり。 札幌は、余談みたいな部分で居心地が良い。

だから、イベントとかで呼んでくれた人ってレコードの話しとかしたいみたいだけど、僕ら全然しなくて、逆に、教えてもらうことが多いよね。みんなイタリアとかフランスの再発のコンピアルバムとか聴いて勉強してるからね。詳しいよね。

水本アキラ(以下●) そうそう、僕は、メシ食ってうまい、うまいといっているだけ。あと、古本屋つれてけとか、あと橋本君(FABFAD。札幌のDJ)に説教したり(笑)そう、彼のほうがきっとある意味、音楽詳しいと思いますよ。




2. Why - TMVGをおこなう理由---僕らは逆にしまっているダメな部分を解放してあげて楽しい!が、イイと思っている。


●TMVGをやるのは、どういう音楽がイイというよりも、どういう感じかたをするのか、というの聴き手に伝えるのが重要だと思っている。僕たちがかける曲のジャンルはムチャクチャじゃないですか。それがフライヤーなどで字にしたりするとスゴくカッコ悪い、でも、イベントに来てくれた人には、特殊な体験はさせていると思う。

■そのへんは難しいですけど、例えばレアな曲をかけたりすると、大勉強会になったりするじゃないですか。昔、そういうイベントをやっていた時は、お客さんはブースの前にかじりついて、必死にレーベル名を確認しているのですよ。それなら、本当に勉強会をすればいいと思う。そうすれば、説明とか、裏話もできるし。だから、クラブで曲を聞かせるのはもっと別な感じでいきたい。

●「テクノしか聴かない」というふうに、特定のジャンルに凄く求道的になったりするのはカッコのいいことだとは思う。でも、自分のダメな部分、たとえば、「といってもサザンいいかも」というのはありますよね。ただ、それは人づきあいのなかでは、否定したり引き出しの奥にしまってしまう場合が多い気がする。「音楽好きの俺」の奥に実は「ドラゴンボールで泣いてしまう俺」も存在すると思う。僕たちはそこをついていきたい。ハウスは専門的な流れ、知識を教えてくれるような、DJの人達ってたくさんいると思うのですけど、僕らは逆にしまっているダメな部分を解放してあげて楽しい!が、イイと思っている。その方法としては、いきなり提示するのではなくて、前半はハウスだったりニューウェイブだったりするけど、最後は大解放という感じでやっている。

■たとえば、単にコレクターとしてストーンズのレコードを10万円で買っても、そこに得られるもの少ないと思う。結局、レコード、本、アートでもいいけど、読んだり、観賞することによって自分の中に得られるグルーヴというものがあれば、なんでもいいんですよ。重要なのは、自分の気持ちを開拓することだと思う。そして僕は、それが仕事として、ブックレビューなり、DJなりでエンターティメントとして提供したい。ただ、ためこんでいる人にはなりたくない。




3.Work - 仕事についての姿勢--- 頼まれないとやらない、これは凄いポイント。



頼まれないとやらない、これは凄いポイント。

■やらしてくれ、やらしてくれ」という感じで行ったことはないですね。だから、仕事なくて困ったなーということもあった。では、(売りこみに)行くか!、というのは無い。売り込み恐怖症みたいのがあって、たとえば、「なんでもやります」とはいえないじゃないですか、かといって、「デザイナーなのでデザインやらしてください」というと、デザインの仕事しかくれなくなってしまうので、つまらなくなってしまう。仕事をいただいて、それが、僕のやっていることと、ちよっと違う感じの仕事がくると、自分の仕事の幅が広がるじゃないですか。そういう感じがいいと思う。それに、 自分ではお客さんの数には関係なく、ベストな形で自分を出していきたいのですよ。だから、やみくもに営業して、自分のやりたいことの3割しか出せないのにお客さんが50万人いるほうがツライ訳ですよ。

●でも、逆に、10人しか座れないカウンターだけで、一晩の客10人のみ、というすし屋もカッコ悪い。それは器が小さいなーという感じもする。そういうふうにするよりも、10人の日も、30人の日もあるけど、その時持っている材料で、お客さんが満足できるサービスをする、のがいいと思う。

■それで、与えるのも、おしつけがましくにはなりたくないのですよ。自分は10出して、受けてが3のポイントで喜んでくれればそれはそれでいいのですよ。だから、さっきのすし屋じゃないけど、ラーメン屋で汁を全部飲まないと、怒られるところとかあるじゃないですか、でも僕はお客さんのおいしく食べれるちょうどいい量というのがある訳で全部食べなくても満足して喜んでくれれば、それでいいのですよ。アーティストだけが、独り歩きしてしまってもダメだと思う。


4.NEW ALBUM"JET BOY JET GIRL

---このアルバム定番になりうるものだと思っています。


NEW ALBUM "JET BOY JET GIRL"(Polystar)
01.17(wed)発売

●リリースするアルバムは、僕たちが、おもしろがって良いと思うものを、みんな買ってくれ、という感じのサンプルにはしたくない。なんというか、僕達のまな板にのった材料で、シェフのきまぐれサラダ(笑)というふうに料理してみせるということで、その日にワン&オンリーなものをおくるという感じですね。普通、リミックス・アルバムというのは、曲のサンプルを提供する意味あいが強いと思うのですが、それは僕たちの仕事ではない。

■僕たちはDJといっても、レコード屋の店員さんから最新のレコードをチェックしているとか、ガンガン、サンプルが届けられる訳でもない。最新のDJが、高速道路をブッ飛ばしているとすれば、僕たちは、法的速度なんです。だから、このアルバムも先端のハウス・リミックスをお届けするというよりも、もう、 ハウスを最新の音楽としてではなく、もう音楽として一般化しているスダンダートものとして作っている。だから、このアルバム定番になりうるものだと思っています。


5.2001今後の予定について
逆に僕たちが本業はミュージシャンではない、ということを活かした曲を作りたい。


●2001年は、まだ予告ですが、オリジナルの曲が同時に3曲ぐらいコンピレーションに収録される予定があります。まだ、企画段階の話しで、詳しいことは話せないけど、ただ、DJがよくオリジナルをやると、クオリティビティを失って、ジャンル・ミュージックに陥ってしまうのは嫌だ、というのがテーマ。逆に僕たちが本業はミュージシャンではない、ということを活かした曲を作りたい。

■結構、DJの人がオリジナル曲を作ると、もともと音楽を作る人ではないのに、妙にミュージシャン気質が出ると思うのですよ。ミュージシャンより自由度のないものを作ってしまっているような気がします。

●もともと、DJになっている人というのは、一般のリスナーの人より、耳がいいというか、音楽に対して感受性の高いひとだと思うのですよ。ということは、当然、「音楽を楽しむ」といことについても、基礎体力がある訳で、当然、僕たちも、そういう部分で、「音楽を楽しむ・聴きこむプロ」というのを、しっかりキープして、オリジナル作品にもそういう感じが伝わるようなものにしたい。




after hours
取材を終えて

仕事としても個人的にもおもしろかった。2人の視点/話題は幅広く、残念ながら構成上のせられなかったが、クラブシーンから、オリンピック、そして藤子不二雄まで話題として出てきた。もちろん、これらのワードはただの雑談ではなく自分たちの仕事へのスタンスについて説明することに深くつながるのである。そして、ふたりともセルフ・プロデュースがうまい。自分自身をプロデュースできることができれば、自分の今すべきことがわかるのだろう。
inteviewer SHINICHI ISHIKAWA(NUMERO DEUX)





TMVG Sitehttp://www.manuera.com/dateoweb/TMVG/
常磐響 Sitehttp://plaza23.mbn.or.jp/~fever/photo.html
水本アキラ SiteSite http://www.manuera.com/dateoweb/




NUMERO DEUX SPRCIAL 022
INTERVIEW WITH TMVG
取材日時:2000.12.08(fri) 20:00-21:00
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