NUMERO DEUX REVIEW


さて、今回の映画レビューですが、地味に鋭い作品ばかり上映している 須貝ディノスのゲーセン内にある「ディノスシネマ1」でゲンズブール 主演の「ガラスの墓標」。もうひとつは、キノでヒットの「オールアバウトマイマザーです」。




「ガラスの墓標」

失敗するなら終わりがいい

ゲンズブールは軽い。僕にとってね。重要ではない。いい曲を書く人だと思うけど、2枚組のベスト盤があれば十分。フィルムについては「ジュテーム・ノン・プリュ」を混雑した映画館で観たけど、期待したほどではなかった。それよりも、後日、ガラガラの映画館で観た遺作「スタン・ザ・フラッシャー」はなかなかよかった。とても美しい作品だった。本作「ガラスの墓標では俳優としてのゲンズブールをチエックすることができる。劇中のなかのゲンズブールはとても魅力的だ。殺し屋をやりながら、人生に絶望している。いや、人生に絶望しているから殺し屋なのだろうか。「仕事」でパリに来たところ大使の娘であるバーキンとの出会いによって、彼の人生はピリオドが打たれた。絶対に自覚的なのである。最高の女との出会いは自分の人生の終わりとイコールなことを。「最高の女と人生をやりなおせる」そんな発想ができるなら、それはとても幸せなことだ。本作を「人生をやりなそうとした人間の失敗話」としてとらえるのは間違っている。絶望している人間には絶望しか居場所はない。最高の瞬間をそのままにするアイディアは「死」しか思いつかない。レゴ・ブロックも、片方が壊れていては組み合うことはない。そして、壊れたブロックには、もえないゴミとして処理されるのを待つのみなのである。


「オール・アバウト・マイ・マザー」

もう少しだけ生きてみる。

論点が多いフィルムだ。臓器移植から、エイズ問題、就職問題から、美容整形問題まで、テンコ盛りなのである。暗いテーマを集めたわりにはカラッとして後味のがいいのは、スペイン映画の特性なのだろうか。ふだん、「人生の崩壊」「狂気の美学」、みたいな作品ばかりいつのまにか観ている自分にとっては、もう少し人生を前向きに考えよう、と元気がでた作品だった。貯金もして、人間を信じることにする。劇中では複数の女性の人生が、さりげないセリフ、演出で非常にわかりやすく描かれていて、カッコつけずに描かれていて気分がいい。 本作を観せられて「人生はポジティブに生きましょう」なんていわれてら、僕もダマされるかもしれない。

text by Shincihi Ishikawa(NUMERO DEUX)










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