Numero deux
Numereo Review

LEOS CARAX

"BOY MEETS GIRL"(1983)
"MAUVAIS SANG"(1986)
"LESAMANTS DU PONT-NEUF"(1991)



今号のSPECIAL008のテーマであるフランスの映画監督レオス・カラックス。その過去の3作品をレビューしてみました。復習または予習をしてみましょう。また、これら作品は12月札幌シアターキノでもリバイバル上映されます。
text by Shinichi Ishikawa(Numero deux)




Leos Carax(1961〜) フランスの映画監督

「ボーイ・ミーツ・ガール」
BOY MEETS GIRL(1983).104min

神童とか、ゴダールの再来とかエラい騒ぎになった22歳のデビュー作。カラックスの分身といわれる主人公アレックス3部作の最初の作品である。気難しいそうな主人公ながら、散りばめられたシーンのいくつかに映画に対するカラックスのピュアな愛情がストレート出ていて微笑ましい。ゆるいストーリーのなかで、夜の街をさまよう主人公の、ピンボールに興じる姿や、奇妙なパーティ会場での台所でのヒロインとのなにげない会話が、かなりいい味。ラストのショッキングな展開・演出は僕の心の残る。そういう意味では珍しいかもしれないが、僕にとって3部作で一番印象に残る作品である。

「汚れた血」
MAUVAIS SANG(1986).119min

メインのシーンがほとんどが夜のシーン。その点では前作に似ているが、映画ファン的なオマージュは影を潜めて、3作中でも一番の完成度が高く、観る者に対するインパクトのあるものになっている。今回のアレックスは殺された父親の代わりに、ミッシェル・ピコリ率いる窃盗団と謎の感染病のワクチンを盗み出す「仕事」に取り組む。夜間の人工光でのシーンが美しい。ジュリエット・ビノシュ、ジェリー・デルピーというタブル・ヒロインな配役であるが、それほど効果があがっているとは思えない(アレックスとビノシュとのやりとりはイイ感じな部分もあるけど)。それよりも、主人公アレックスの寡黙さのなかに表現される、一種の「対象が特定できないイライラ感・孤独感」にシンパシーを感じる人は多いのではないだろうか。デビット・ボウイの「モダン・ラブ」と共に夜の街を疾走するシーンは忘れることはできない。

「ポンヌフの恋人」
les amants du pont neuf (1991).126min

パリの橋、「ポンヌフ」に住む浮浪者アレックスと、失明の危機にあるビノシュとの恋愛を描いている。浮浪者=なにも持たない人間というコンセプトという訳なのだが、その辺に稚拙と批判されてもしかたがないカラックスの甘めの恋愛観がある(同時のその弱々しさが魅力のひとつなのだが)。そして、ビノシュとプロデューサーの圧力とはいえラストを変更したところで、この作品は致命的なダメージを受けることになった。ビノシュが地下歩道を走るシーンや、アレックスがビノシュのポスターを燃やすシーンなど、断片的に印象に残るシーンはあるものの全体的な弱さは隠すことはできない。浮浪者施設をドキュメント的に撮影した部分も作品自体には、ほとんどプラスになっておらず残念。何か悪口ばっかりだが、年に1回は「カラックス節」を味わいたくてヴィデオ屋で借りてしまうのも事実。この作品の後、カラックスは、最新作「ポーラX」までの8年にもおよぶ長い沈黙の時代にはいる。



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