NUMERO DEUX ReviewWeek End Film Review ×3
"MADE in U.S.A"
"POLA X"
"007 World is not enough"
週末は映画を観にいきましよう。と、いう訳でニュメデューがセレクトした週末にチェツクしてみた3本の映画をレビューしてみました。
text by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)
"MADE in U.S.A" Film by JEAN-KUC GODARDあるインタビューでゴダールは、「私は映画の予算で生活している」といっていた。つまり興行収入などアテにしていない訳だ。それはどーか、とも思うが、ゴダールの台所事情などがわかった気がして少し嬉しい。
さて、パンフを読むとそんなゴダール作品の中でも本作は、もっとも低予算らしい。たしかに、アパートみたいな部屋と、その辺の路地裏みたいな場所ばっかりロケというのは学生映画なみのティストである。そこで、「安く」感じさせない手腕はゴダールにはたしかにある。まぁ、それで映画として面白いかはちよっと別の問題なのだけど。アンナ・カリーナにカラフルな服を着せる。それにあわせて、映画全体のトーンをカラフルなアイテムをところどころにに散らせてまとまりをよくする。この辺の手法は「中国女」「気狂いピエロ」にもつながる、この頃のゴダールの得意のパターン。そして、ストーリーは解決してもまったくカルシタスのないスリラーものになるのである(「ゴダールの探偵」もそう)。
"POLA X" Film by LEOS CARAX友人のいない僕はヒマだったので元旦の午前中に観に行った。8年ぶりのカラックスの新作。でも、そのブランクを感じさせない、といったら聞こえはいいが、どちらかといえば「もしかしてずっと家にいたの?」と思うほどカラックスは変わっていない。「ポンヌフ」直後のインタビューで、「今度はミュージカル・コメデイ撮る」とかなんとかいっていた記憶があるけど、無理だと思います。本当に。でも、僕は君の味方を全力でしたい。これを読んでいる人で本作を観た人は、ほとんどが否定的な感想をもったと思う。そして、僕は今、それに全力に反論したい。息が切れるまで。
「ストーリーにリァリティがない」といっている方々に聞きたい。そんなにリアルがなかったのか? リアルの問題はもう一度だけ考えなおして欲しい。たしかに、主人公ピエールの行動は唐突で必然性がない。しかし、僕達はつまるところ利益/不利益を頭のなかでコンピューターのように計算して生活していいのだろうか。僕は別にピエールに共感した訳ではない。いや、しなかった。ただ、時には人間は不合理な行動のなかで、新しいなにかの突破口をみつけなければ、ならない、ならない、ならないんだ!、というカラックスの想い、を僕は強く感じることができた。この感覚は僕は忘れることはないと思う。そして、打算的な生活ののなかで、ちよっとだけピエ-ルのことを思い出すことは、自分のためになるような気がした。
"007 World is not enough" Film By見合いの席でアート映画しか観ない女性と007しか観ない女性のどちらかを選べ、といわれたら、僕は迷わず007の好きな女性を選ぶ。アート系映画しか観ない奴なんて男にしろ、女にしろロクでなしに決まっている。そんなに毎日、「80年代ゴダールの作風について」とか、「アラン・レネ作品の新解釈」とか話してられるか。それよりも、「007のあのシーン、ドキドキしたねぇ」とか「車からミサイルが出てカッコ良かった」といったふうの会話のほうが絶対楽しいに決まってる。
さて、ピアーズ・ブロスナンの007の3作目になる本作は、ユーモアとシリアスのバランスのとれた良質の娯楽作品に仕上がっている。このバランス感覚こそ後期ムーア時代は、なんかユーモア色が濃すぎて、 タルかったし、心気一転のダルトンは「リビング・ディライツ」は傑作だと思うが、次作の「消されたライセンス」そのストーリーと作風がシリアスすぎて007でもなんでもないところが問題があった。
本作でもシリアスになりすぎる可能性があったのだが、いかにも007らしい(ジェットボート/スキー)メリハリのあるアクションシーンをうまく挟み込んで暗くなりすぎない工夫がある。といっても時折、迷わず「殺し」を実行するボンド像もシャープに表現 されていて作品を引き締めている。悪役も冷酷無情のなかにもなにかモノ悲しい雰囲気持たせているのもうまい。ソフィ・マルソーの起用についてはボンド最後の説得シーンに見せる動揺の表情が凄く良いが、その辺は007にそぐわない深みが出過ぎていてかもしれない訳で、本作は本当にギリギリの部分で絶妙なバランスを持っていると思う。
レビューの感想などありましたらここまでおよせください。
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