NUMERO DEUX ReviewKINO PROGRAM March.2000
"橋の上の娘"
"地雷を踏んだらサヨウナラ"
シアターキノのスタッフであるmidoriさんに3月に上映されるプログラムから「橋の上の娘」「地雷を踏んだらサヨウナラ」をレビューしてもらいました。
text by Midori
「橋の上の娘」la fille sur le pont
たくさんの男と恋愛してはいつも棄てられてしまう運のない女アデル(ヴァネッサ・パラディ)は、自殺を決意しパリのある名もない橋の上にたたずんでいた。そこに偶然、"的"となるパートナー探しにやってきたナイフ投げの曲芸師ガボール(ダニエル・オートゥイユ)と出会い、命を助けられる。アデルはガボールのパートナーとして、モナコ・サンレモ・アテネ・イスタンブール、と旅を続ける。しかしアデルは突然、ガボールの前から姿を消してしまう…。パトリス・ルコント監督の最新作である『橋の上の娘』は、"死"という極限の状態の狭間で生まれる究極の愛の物語である。ヴァネッサ・パラディの体すれすれにナイフが突き刺さる瞬間の、不安と緊張と快感の入り交じるため息がいつまでも耳に残る。往年の名曲からトルコの民族音楽まで、素敵な音楽がスタイリッシュなモノクローム映像を彩るこの作品は、V・パラディの魅力が最大限に表現された20世紀最後の純愛映画である。
「地雷を踏んだらサヨウナラ」1970年代初頭、民族解放軍クメール・ルージュと政府軍との戦闘が激化するカンボジアで、一人の青年が銃弾の飛び交う中を駆け回り、カメラのシャッターを押し続けていた。彼の名は一ノ瀬泰造(浅野忠信)、25歳。これは、ロバート・キャパや沢田教一に憧れ、戦場カメラマンとして名を残すことを夢見て日本から単身インドシナに乗り込み、若くしてその生涯を閉じた『タイゾー』の生き様を描いた作品である。カンボジアで出会った親友のロックルーや白人カメラマンのティム、家族のように迎えてくれたマダムや幼いソッタとチャンナ兄弟、ウェイトレスのレファンなど、様々な人々との生活の中で、泰造は解放軍の聖域であるアンコール・ワットを撮るという想いを日に日に強めていく…。泰造を演じる浅野忠信は、泰造の没年日 とされる日に生まれ、風貌も似ており、まるで生まれ変わりかのように生き生きと泰造を演じており、今までとは違った俳優・浅野忠信の新しい面を見る ことができる。アンコール・ワットという"夢"に向って一直線に走り出す泰造の姿は、哀しい結末とはなったが私達に何か清々しいものを残してくれた。
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