NUMERO DEUX UROTANGE

UROTANGE DISC REVIEW 15 June.2001


「洋楽って何を聴いたらいいのかわからない」、という方のためのガイド的な誌面作りがコンセプトで札幌市内のC D店など約50カ所以上に配布されているフリーペーパー「UROTANGE」(ウロタン)が、ライティングするディスクレビュー。このグループは、その他「週刊UROTANGE」というラジオ番組(ラジオ・カロス78.1MHz/金曜12:00より)も担当しています。









WEEZER / THE GREEN ALBUM
http://www.weezer.net/

サン・テグジュペリは誰が読んでも美しいと感じる童話『星の王子さま』の作者として有名な小説家で、1900年のフランスはリヨンに生を受けた。彼は飛行家でもあり、冒険飛行の体験を元に『夜間飛行』、『人間の土地』などの作品を書き、危険を顧みず行動するヒューマニズムを瑞々しく描いた。そしてまた彼は酷い醜男であったという。彼はその醜さゆえに空という住みきった世界を手に入れることを渇望し、歴史に残るあまりに美しい小説や童話を書くに至ったと考えるのは必然の流れであるが、私は今回のアルバムにおいて特に、ウィーザーのリヴァース・クォモという男にサン・テグジュペリの影を感じずにはいられない。華々しいデビューアルバム、セカンドアルバムの失敗、信頼していたベースの脱退。少なからぬバンドに付いてまわるありふれた問題を最悪の形で受け止めてしまったがゆえ4年半もの休養を余儀なくされた彼の精神は常に醜くなにかと葛藤している。うまく立ちまわれずに地べたを這いまわり、なんとか精神の非日常への逃避を抑えている。サン・テグジュペリは人が踏み込めない美しさを文章に残し、リヴァース・クオモもやはり物語のような歌詞と、完全にその歌詞を載せるためだけにあるかのような音を生み出した。彼等の作品は共通してあまりにも高く透き通る意思に支配されていてとても共感できるものではない。しかし『星の王子さま』が歴史の中に燦然と輝き続け、それこそが名作の条件のひとつであるからには、このウィーザーの『グリーン・アルバム』が歴史的名盤となるのはもはや言わずもがな、なのである。(城山)


SWING OUT SISTER / SOMEWHERE DEEP IN THE NIGHT
http://www.swingoutsister.com/

深夜のTVショッピングを見ていると、ふと懐かしい曲がかかる。70年代中期から80 年代後期までのヒット曲を集めたオムニバスCD「ユア・ソング」という商品の紹介でのことだ。エルトン・ジョンの「ユア・ソング」やスタイル・カウンシルの「シャウト・トゥ・ザ・トップ」などがかかる中、僕がひときわ懐かしく感じる曲、それがスウィング・アウト・シスター(以下S.O.S.)の1987年のヒット曲「ブレイクアウト」である。当時のメンバー構成が女性1名男性2名(現在は女性・男性各1名づつ)であったり、楽曲のおしゃれな感覚から、ドリカムが「和製スウィング・アウト・シスター」などと言われたこともあったグループだ。もっとも日本ではドラマ『真夏の夜の夢』の主題歌「あなたにいてほしい」のヒットで知っている人も多いのかもしれないが。「ブレイクアウト」がヒットしたころ、作曲を担当するアンディ・コーネルは以下のように語っていた。「僕らはポップグループになるつもりはない。最高の B.G.Mを創りだしたいんだ。映画のワンシーンのような楽曲をね」と。アルバム毎に「ブレイクアウト」のようなパンチ力こそ失いつつも、じわじわと聞き手を引きつけるB.G.M.的な魅力を増してきたS.O.S.。フランス映画のワンシーンに出演しているかのような錯覚を感じる今作を聴いていると、そんな昔の発言を思い出した。(児玉)


AIMEE MANN / BACHELOR NO.2 OR, THE LOST REMAINS OF THE DODO
http://www.aimeemann.com/

エイミー・マンは99年米映画『マグノリア』のサントラによって、日本でも注目されるようになったシンガーソングライター。そもそも映画『ブギーナイツ』で大絶賛された新鋭監督のポール・トーマス・アンダーソンが、友人であるエイミーの楽曲「デスリー」に触発されて、『マグノリア』を作り上げたのは有名な話なのだ。さて、本作『バチェラーNO.2』は、エイミーのソロ3作目。80年代前半、ティル・チューズデイというバンドのヴォーカリストだった彼女は、商業的に決して恵まれなかった。しかし、自ら「スーパー・エゴ・レコード」を設立した後『マグノリア』が公開され、テーマ曲「セイヴ・ミー」でグラミー賞にノミネートされる快挙となり、今、エイミー・マンはまさに旬! このアルバムでは“恋愛関係”の中でも“苦”の部分が多く歌われている。恋愛のウキウキ感だけでなく、芽生えてくる不信やあきらめの感情に対する理解。エイミーの淡々とした歌声はさっくりと心を刺す。(玉手)






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