NUMERO DEUX UROTANGE

UROTANGE DISC REVIEW 21 December.2001


"URO"は札幌の音楽情報発信グループ。おもな活動としては、フリーペーパーの発行や、毎週月曜21時より音楽情報プログラム「週刊U-ROCK(ウーロック)」を FMラジオカロス78.1MHzにて担当。









GAY DAD / TRANSMISSION http://www.gaydad.com/

情報が氾濫するこの世の中では正しいといわれる情報が正義、そうでない情報が悪、の図式を呈していて、事実を自分で検証し、確かめるという工程が欠落し、なすがままを享受するシーンが増えていると感じるが、はたしてそれでよいのだろうか? 結局ここでは音楽において説明するが、流れてくる「ミリオンセラー」の看板を背負うシングルを買い、それがダブルミリオン、トリプルミリオンになるが、数年後聞いてみるとまったくもってつまらない曲で、めったに取り出さないくらい奥に押し込んだり、中古として売ってしまう経験を持つ読者諸氏はけっして少なくはだろう。とはいえ、正しい情報を選択することは難しい。どの雑誌(情報源)が確実、などということはまずないからだ。そこで必ず役立つのがレコードショップの試聴機なのである。これを活用した経験のある方は意外に少ないのではないだろうか? かなり有用なのでこれからはどんどん活用してみて欲しい。このようなレビューは独りよがりなのであくまでも購入の決定要素にしてはならない。参考程度に抑えるべきである。ということで自分で音源を調べきれるものは紹介せずに、今月は試聴機に入っている可能性が低いアルバムを一枚おすすめする。ゲイ・ダッドの2ndアルバム、トランスミッションである。あくまで曲情報のみを綴ると、サイケデリック、ニューウェイヴ、ポップ、メロディアス、ドラマチック、エモーショナル、といったところ。あとはあなたが判断するのだ。(城山)


PINK FLOYD / ECHOES ミ THE BEST OF PINK FLOYD http://www.pinkfloyd.com/

タイトル通りベスト盤である。日本ではミスター・チルドレンや浜崎あゆみ、海外でもスマッシング・パンプキンズ、ダイナソーJRなどここ数年、ベスト盤の発表が相次いでいる。が、このベスト盤はそのすべてのものとは一線を画している。ピンク・フロイドとは60年代後半にイギリスで生まれたバンドであり、彼らの音作りや詩の世界が独特ゆえ、サイケデリック、もしくはプログレッシブ・ロックなどと引用されることの多いバンドである。彼らはアルバムを作る際、毎回ひとつのコンセプトを用いて制作する。それゆえアルバムごとに楽曲のスタイルが変わり、表現方法も異なる。このベスト盤が一線を画している理由はそのすべてバラバラな楽曲がひとつなぎになり、ひとつのアルバムとして存在しているところにある。単なるヒット曲集ではないのだ。残念ながら、日本での彼らの人気度は非常に低い。海外では「彼らのライブは見ておかないと一生後悔する」とまで言われる人気を誇っているピンク・フロイド。日本の地を一度も踏んでいないからだとしてもこの格差は正直、頷けない。多くの人はプログレと聴いて敬遠きたのではないのだろうか? だからこそこのベスト盤をオススメしたい。彼らの織り成す演奏は必ずしも様式美的なクラシカルなものではなく、非常にキャッチーであり、メロディアスである。35年のキャリアをもつバンドの集大成はベストでありながらも、聴く者すべてに新鮮さを与える輝きを放っている。(児玉)


JEWEL / THIS WAY http://www.jeweljk.com/

突然だが、私はジュエルと同じ1974年6月24日生まれ・27歳である。それこそ地球上には、自分と同じ生年月日を持つ人間がゴマンといるだろう。けれどもそれが、4枚のアルバムを発表し、全世界で累計2500万枚のセールスを記録したシンガーソングライターだったなら、がぜん注目せずにはいられない! ジュエルは唯一無二の歌声を持ったまさに“宝石”。繊細にしてタフな歌声は、父親から伝授されたヨーデルのおかげである。そしてアラスカの自然で生まれ育ち、幼いころから両親とともに酒場のステージを回ったり、オンボロ車に1年間寝泊まりしたりノ。すべてのことがこの宝石を研磨している。ジュエルの視線は穏やかでいて鋭い。「思慮深く、意識的に生きていくべき」「自分がいかに幸せか考える前に、どのくらい人に尽くしたかを考えたい」など、迷いのないメッセージは強い意志を感じさせる。この3作目では、よりポップにアコースティックギターをかき鳴らし、歌っているのがわかる。さらなる成長を遂げたジュエルはまだ27歳。これからも期待できるアーティストだ。








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