NUMERO DEUX URO

UROTANGE DISC REVIEW 26.August


"URO"は札幌の音楽情報発信グループ。おもな活動としては、フリーペーパーの発行や、毎週月曜21時より音楽情報プログラム「週刊U-ROCK(ウーロック)」を FMラジオカロス78.1MHzにて担当。









WEEZER / MALADLOIT

東京国立近代美術館でカンディンスキー展を見てきた。1944年に没した彼の創作活動の全盛期は約100近く前なのだが、いまだその作品に古さはなく、主催者の言葉を借りると「さらに輝きを増している」という。

そして、まったくその通りだった。芸術というものは本来表現の自由の限界点に位置する行動が具像化されたもので、別段50年後、100年後に見ても色褪せない素晴らしさを持っていなければいけないなどという垣根も、もちろんないのだが、後世にまで残る芸術には必ず共通する部分があり、それは作品に明確ななんらかの意思が詰まっているということだ。

前述とは一転するが、分かりやすくいえば作者の魂が込められているものは後世大きな美術館で回顧展が行われるものでも、誰にも評価されず、世間に出す欲もなく描かれたその辺にいる普通のおじさんの普通の絵でも等しく輝いていることになる。

また、この位置に達するまで葛藤のない者の作品はその資格を得ないことも同様である。すべての矛盾を包括しつつこれら総ての要素を満たすウィーザーの新譜『マラドロワ』は後世どのような評価が為されるのだろうか? 寿命は尽きるだろうが、興味は尽きない。(城山)


OASIS / HEATHEN CHEMISTRY

少年は兄に連れて行ってもらった小さなクラブでのライブを見てからロックスターを夢見た。夢を追い続け、少年は青年になり巨大なアリーナを満員にするバンドのフロントマンとなる。ロックスターになる。という話はよくある。

オアシスのギャラガー兄弟はまさにこのイージーなイメージ通りに突き進んで、90年代初期にアメリカの商業ロック界を一変させたニルヴァーナのように、いや、もっとあっけなく自分の人生に予定されていた出来事がただ起こっただけ、というように低迷の続いていたイギリスのロック界を再び世界に勇躍させるきっかけになった。

オアシスの驚くべきところはその後にある。名を馳せた後には通常、音楽的低迷を迎えるバンドが多い。たとえ売れ続けていてもセカンドアルバム以降に今ひとつの曲が混ざることが多くなったりする、ということだ。

しかしオアシスにはそれがない。この部分において他のバンドよりも突出しているからビートルズと比較されることが多いのだろう。しかし、オアシスはそんなビートルズと比較されても潰れることなく、遜色ない活躍を続けている。

なぜか? 才能? それはもちろんある。アーティストはデザイナーではない。受け手の商業的、かつ精神的要素を絡めて作品を作る必要があるデザイナーとは違い、自分の表現すべき物事を忠実にだせる者がアーティストと言うべき存在なのだが、それは結構多くのアーティストが行使している。

彼らが他のアーティストと一線を画し、ビートルズさえも超える要素。俺が考えるその要素は、彼らがロックスターであり続けている、イージーにロックだけをただただ演り続けているから。ということにあるのではないだろうか。アートの世界で最後に勝つのはやはり純粋さなのだ。


BENTON FALLS / FIGHTING STARLIGHT

近年、日本でも頻繁に聞かれるようになったインディーズという言葉。

そもそもは大手メジャーレコード会社に対して、小さな独立(インディペンデント)したレーベルを指していた言葉であったのだが、昨今のモンゴル800や氣志團の台頭を見ていると、どうもそうではなく、ひとつの ジャンルとして確立し、それ自体がブランドとなってしまった感がある。

インディーズがそういう風に大きく変わってしまったことの良し悪しは別にして、今、そういったインディーズのアーティストが熱いのは確かだ。ディープ・エルム・レーベルのベントン・フォールズもそうだ。

米カリフォルニア州出身の4人組が奏でるサウンドは、ディープ・エルムというレーベルが得意とするいわゆる"エモ・コア"。エモーショナル溢れるロックだ。このアルバムでも1曲目「オール・ジーズ・シングス」から10曲目「ユードラ」まで魂のロックが炸裂する。

近年のエモ・コアはゲット・アップ・キッズやスターマーケットの新作に代表されるよう、どうもフォークな歌モノに変換していっている感があるが、彼らはまだまだ荒々しい激しさを忘れてはいない。

前に述べた2アーティストの新作に満足がいかず悶々としている人はぜひこのアルバムに触れてみてはいかがだろうか?断っておくが、決してベン・フォールズ・ファイヴと間違えないように。(児玉)






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