INTERVIEW

056 [Yoshiki boutique][hamonica bld.](2005.5.29)

2007.07.30

服はどこで買いますか?ここ数年、札幌の中心部はアパレルショップが急速に増えている。その大部分は道外ブランドを取り扱うセレクトショップ。その中で今回紹介する「ヨシキブティック」は札幌を拠点に服を作るアトリエと、ショップが同じ場所にあり、デザイナーの世界観を反映したシンプルで可愛らしい洋服を作っている。そして、このお店のDM、ウェブサイト等の販促関係は札幌のデザイン・ユニット「ハモニカビル」が担当。洋服のデザインと、それを支える販促デザイン。リアルな現場の話を聞いてみた。

Text by Shinichi Ishikawa.

NUMERO DEUX SPECIAL 056 Design&Design.
Interview with Yoshiki Satou(Yoshiki boutique)& hamonica bld.(Naoki Fujita & Kaori Kojima))
取材日時:2005.5.29(sun) 18:00-19:00
取材場所:Yoshiki boutique
Interview & Photograph by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX

Yoshiki Satou(Yoshiki boutique)
インタビュー:佐藤義喜(ヨシキブティック)

—-現在までのプロフィールを教えてください

札幌の服飾の専門学校を出て、そして東京のアパレルメーカーに就職しました。そこは2年ぐらいは居たのですけど、違うことがやりたくなって札幌に戻りました。しばらく札幌でインテリア関係の仕事をしていました。でも、また洋服を作りたくなって、今度は独立することにしました。メーカーに勤めていると、自分の好きなものは作れないというのがあったので。それが現在のお店になっています。2002年のことです。

—-お店のコンセプトを教えてください

最初は洋服を作りたかったので、お店をやるとは考えていませんでした。普通に考えれば、自分の作った服をセレクトショップ等に卸す形になると思います。でも、自分の作るものを目の届く範囲に置きたかった。服を売るというときに自分のコンセプトを全部あわせて売りたいんです。それによって、自分の世界をお客さんに提供できると思っています。
その結果として、自分のお店は洋服を作っている場所で同時にお店も兼ねているという感じになりました。お店の洋服を全部自分で作っています。特に手作りにこだわっている訳ではなくて、クオリティさえ確保できるなら工場でもいいのです。ただ、工場に頼むとなると、ある程度の数を作らなきゃならない。大量生産という形になると、売り方自体も変わってきてしまって、それは自分のスタイルではないのです。
札幌でやる理由として工場に発注しなくても、生産が追いつかない、ということもなく同時にビジネスとしてやっていける、というのがメリットだと思ってい ます。

—-洋服について教えてください

シーズンことにはっきりとしたテーマで展開していく…というスタンスではなくて、基本的に定番モノを展開していって、少しづつ違うものを出しています。カジュアルでポップ、そして、ディテールにはこだわっていますね。カットソー、 シャツをよく買われる方が多いです。

—-服のデザインのアイディアはどのようにして浮かびますか

お店にもディスプレイしていますが、レゴとかスヌーピーの世界観が好きなんです。具体的にデザインする時は「顔」からはいるんです。まず、女の子の、髪型とか顔の形、スタイルとか、イメージを作って、服のデザインを考えていきます。その女の子のイメージも、必ずしも現実的ではなくて、スヌーピーのようなビーグル犬だったりすることもあります。自分の作るものは、たとえばスヌーピーの世界にあってもマッチするようなものが作ればいいな、と思ってます。

—-1日の生活はどんな感じですか

お店が12時からなんで、少し前に来てお茶を飲みます。その後はずっと仕事ですね。結構遅くまでやっています。自宅はここから近所です。

—-お客さんはどのような方々が来られますか

いろいろなお客さんが来られますが、特に感じるのは20代前半の普通のOLさんよりも、デザインに興味があったり、実際にデザインの仕事をしている方々です。一度、お店まで来ていだけると気に入っていただける方が多いと思います。

—-今後の予定など教えてください

札幌を拠点にしながら自分の作った洋服を全国的に展開していきたいなと考えています。今、そのやりかたをいろいろ考えています。

hamonica bld.(Naoki Fujita & Kaori Kojima)
インタビュー:ハモニカビル(藤田直樹+小島歌織)

—-プロフィールを簡単に教えてください

藤田直樹:僕はデザイン系の専門学校を卒業して、現在デザイン会社でアートディレクターをしています。仕事の中心は平面中心です。仕事の合間に自主制作はずっとしていました。仕事でのデザインが制約が多い訳で、それからはみ出して広がった空想をプライベートな作品作りで解消していました。専門学校に進学した時点では、デザインの仕事についてそんなに深く考えていた訳ではなく、漠然とネクタイをしない仕事がいいな、音楽が好きだったのでレコードジャケットのデザインをしたいな、という程度の動機でした。

小島歌織:私は将来はまんが家かイラストレーターになりたいなと思ってました。でも、進学を考える時点で、それは難しいかな、と感じていて。そんなとき高校の授業でAdobe Photoshopに出会いまして。そのソフトでいろいろ作品を作るのが楽しくなり、結果、美大に進学しました。在学中にフリーペーパーの制作や、広告代理店でアシスタントなどの仕事をし、卒業して、現在はデザイン会社で制作の仕事をしています。藤田との出会いのきっかけは、以前に働いていた代理店で仕事上のつながりがあったのです。


「PARTS HUNT」

—-「ハモニカビル」ができたキッカケを教えてください

藤田:彼女に仕事の合間に僕のプライベートな作品を見せたら、親近感を持ってくれて。じゃあ、一緒にやってみる?ということになりました。それが「ハモニカビル」になったのです。半年前ぐらいですね、僕としては自分の活動の延長線上に彼女のセンスが加わってくるという感じですね。これからはもっと外にむけてやっていくためにユニット名を考えました。

小島:私にとっては「ハモニカビル」は仕事以外での新しいチャレンジです。誰かと一緒につくるというのが仕事以外ではじめてだったのですが、日々刺激があってとても楽しいです。

—-「ハモニカビル」のネーミングの由来を教えてください

藤田:街を歩くのが好きで、ビルの狭間にあるような細長い雑居ビル、それをたしか楽器のハーモニカのようなので、ハモニカビルと呼ぶ、というのが記憶にありました。そこからとってます。デザイン・ユニットとしてのネーミングの意味とは雑居ビルにいろいろな人がいるというイメージで、今、「ハモニカビル」は2人ですけど、将来的にはライターさんや、モデルさんなどがメンバーになって、いろいろな人が出入りするフレキシブルな仕組みを持つユニットのにしていきたい。あと、言葉の響きの可愛らしさというもあります。細いながらも立っていこう!と思ってます。

—-デザインに対する発想について教えてください

藤田:僕が目指しているデザインのテイストは、「キュートで、ポップで下品で、エロ」。「ハモニカビル」では、まだ最初の2つぐらいしか表現できてないですが、これからは後のふたつの異物感と、人をギョッとさせることができればいいな、と思ってます。

小島:私は流行にとらわれないけれど、どこかで流行は取り入れているもの。普遍的なものに育っていくようなデザインを自分の中で考えていきたいです。

藤田:そのあたりが彼女と意見がぶつかるんですけどね(笑)。

小島:ぶつかるところはあっても、目指すデザインに共感できるから一緒に出来るんだと思います(笑)。


「Yoshiki boutique collection DM」

藤田:僕はずっと、他のいろいろなデザイン作品をみないで仕事をしてきたんです。でも、最近それに限界を感じてきて、自分の作るものがつまらなく感じたり、飽きたりしてました。それで、いろんなデザインを見始めたらショックを感じて(笑)。2パーセントのものは見て安心できたのですが、あとは本当にショックを受けました。今、改めて勉強しつつ変わった感じのものを作っていきたくて迷走中です。 「ハモニカビル」の中で初心に戻りたいですね。

小島:私は、学生時代は3DやCGが自分にとって憧れが強く、手書きはなるべくしないでデジタルでやっていました。今は逆になんでも形にする前に手書きするようにしています。面倒に感じることも多いですがそのほうがデザインの組みたてもすごくスムーズなので。アイディアも思いついたらメモを残すかしています。忙しい時のほうが、アイディアが浮かびますね。オフだと体がリセットモードに入っているせいか頭がカラッポで…。でもものすごく楽しいときは、自分の状態に関わらず浮かんできたりします。

—-具体的にお二人でデザインの作業はどのように進めますか

小島:おたがいにまずその仕事についてのラフを作ります。それを見せあって、どちらかが中心となり、まとめあげるという感じですね。そして、そのやりとりの中で必ず一回はお互いキレます。(笑)。

藤田:僕は争いはあっていいと思う。仕事としてやる以上、自由な発想だけでやってもよくないし、できるだけ客観的に、デザインは後に出した効果も考えな いといけません。彼女のアイディアが固すぎると思った時、僕がつついたり、逆に僕は歳ですから(笑)、若い彼女の意見も聞くのも大切だと思っています。手書き的なティストというのも彼女が担当しています。僕は全然できないので。


「Yoshiki boutique LOGO」

—-「ハモニカビル」は札幌のアパレルショップ、「ヨシキブテック」さんのウェブ、DMなどを手掛けていますが、そのことについて教えてください

小島:ヨシキさんとは、ヨシキブティックのお店の客として知り合って、それをキッカケにロゴやDMのデザインの仕事をやらせていただくことになりました。

藤田:DMなど平面のデザインについては、お店のロゴのデザインの依頼があり、ロゴが確定した時点で、その後のデザインに関する方向性も決まった 感じですね。デザインコンセプトは、ヨシキさん持っている服に対する可愛らしいイメージを大事にしつつ、遊びのあるデザインしています。

小島:サイトのデザインについては、ヨシキさんのお店に来られるお客様は、インターネットのヘビーユーザーはあまりいないと聞いていたのでシンプルにわかりやすく、アナログ感があるもの、パソコンの環境を選ばないものにしました。春夏コレクションの部分は女の子がショッピングから帰ってきたあと、おうちにあったポラロイドカメラで買った服を着てうつす「モデルごっこ」の様子を描いています。

—-サイトのデザインについては、ヨシキさんからはどんな要望がありましたか

小島:あまり複雑な感じにしないで、印象に残るものにして欲しい、というのがありました。ヨシキさんの服に対する世界観を、お聞きしてメモして、それからデザインのアイディアを考えて、それをヨシキさんに確認してもらいながら、進めていきました。

藤田:僕はウェブのことはサッパリですが、自由なようで結構制約があるのを感じています。ヨシキさんのサイトについては、最初はシンプルで見やすい形で 進めていきたいと思ってます。

—-今後の予定を教えてください

藤田:将来的にはいろいろなことを、やっていきたいですが、今はヨシキブティックさんの仕事を中心にキチッと仕上げていきたいですね。ヨシキブティックの世界観は、自分たちの好きなティストでもあるしファッションの販促というのは、グラフィック・デザインの中でも、ある意味、最先端の場所にあると思うんです。多分ファッションには人を豊かにする要素が沢山盛り込まれているからだと思います。それを自分たちがやることに、やりがいも感じています。これからも、おもしろいものが作ればいいなと思います。


after Hours
佐藤義喜&ハモニカビル両者の雰囲気として感じるのは、静かな情熱。そして、インタビューをしてみると、発言に常識的な感覚とクリエイティブな発想が、交互に顔を出していくのが、心地よく感じる。そういった人々が作りだすものは、いつも品が良いものである。


Yoshiki boutique(ヨシキブテック)
札幌市中央区南1条西1丁目丸美ビル4階/12:00 – 20:00
注:2007年8月15日現在下記に移転

札幌市中央区南2条西4丁目COSMO3F/10:30〜20:00(不定休)
http://www13.plala.or.jp/yoshikiboutique/


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