「特別展示 おばけのマールとちいさなびじゅつかん」に行く。
札幌で生まれた絵本の楽しい原画展(2009.01.24)
札幌市円山に住む可愛らしいおばけ。名前はマール。2005年より発刊された絵本「おばけのマール」シリーズの主人公である。作者は石狩在住のライターであるけーたろうと、市内在住のイラストレーター中井令。出版元は市内にある一般書籍からアート・カルチャーに関する書籍を出版している中西出版。札幌から全国に発信されるオリジナルの絵本なのである。
ストーリーは小さくて可愛らしいおばけのマールが、市内を舞台にファンタジーな体験をしていく。現在までに「おばけのマールとまるやまどうぶつえん」「おばけのマールとゆきまつり」「おばけのマールとおべんとう」の3作と、今回紹介する4作目が発行されている。書店やインターネット書籍販売サイトにて入手することが
できる。
この絵本の魅力は、イラストレーターとして活躍する中井令によるシンプルながら、親しみやすいキャラクターのフォルム。眺めているだけで楽しい気分になる背景の色彩。そして、石狩在住のライターけーたろうによるマールとさまざま出会い・交流を表現していくテキストである。子供も大人も楽しめる。また舞台が円山動物園など札幌に住む人には、おなじみの場所が出てくるのも楽しい。
最新作「おばけのマールとちいさなびじゅつかん」は昨年の12月発行された。本作ではマールは蝶に誘われて市内の三岸好太郎美術館を訪ねる。その中でマールは展示作品から抜け出してきたキャラクターと楽しく遊び、学芸員さんから美術鑑賞の楽しみ方を教えてもらう。
本作と関係して北海道立三岸好太郎美術館では「おばけのマールとちいさなびじゅつかん」の特別展示が開催中だ。原画が丁寧に額装され、じっくり鑑賞することができる。環境の整った静かなギャラリーで観るのは絵本を開くのとは違った魅力がある。
見どころは原画の展示だけではない。エントランス付近に注目。絵本から抜け出したマールちいさな立体オブジェが可愛らしい。奥の展示スペースの吹き抜けの天井には、絵本のワンシーンを再現した楽しく遊ぶマールたちの巨大なモービルにびっくりする。
また、実物大?の記念撮影用のマールがあって、小さいなお子さんが喜びそうである。絵本のためのラフスケッチの展示もされており、これは制作過程を知る上で興味深いものである。
会場の北海道立三岸好太郎美術館は、大正から昭和初期の日本近代洋画史にて活躍した札幌出身の画家・三岸好太郎の美術館。作品250点を収蔵・展示を行っている。
三岸好太郎は初期は素朴な画風から出発した作家であるが、後期の作風はフォーヴィズムやシュルレアリズムのような前衛的な作風にも接近しており、そのユニークともいえる軌跡は、興味深く観やすいものである。ぜひ、マールの展示と同時開催される三岸美術館所蔵品第四期も同時に楽しんで欲しい。
★書籍情報 「おばけのマールとちいさなびじゅつかん」
え/なかいれい ぶん/けーたろう
A4変形判/24頁 ISBN978-4-89115-183-6
¥1,260(税込)(中西出版)2008.12.6発売
★ 会場・展示情報 特別展示「おばけのマールとちいさなびじゅつかん」
・会 期:2009年1月23日(金)〜3月27日(金)
月曜休館・9:30〜17:00(入場16:30 まで)
・会 場 :三岸好太郎美術館(北2西15)
・入場料 :一般500円(410円)、高大生250円(170円) 中学生以下、65歳以上は無料。( )内は10名以上の団体料金 http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/mkb