「SR サイタマノラッパー」
2009年 04月 25日(土) 〜2009年 04月 27日(月)
【4/25(土)】13:30/15:10/16:50/18:30/20:10
【4/26(日)】13:30/15:10
【4/27(月)】18:30/20:10
前売1,200円/当日1,400円
上映時間80分(開場は10分前)
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009」オフシアターコンペティション部門グランプリ受賞作品が札幌で初上映された。作品のレビューと監督・キャストの舞台挨拶の様子を紹介していこう。
「音楽をやる若者」を描く作品は国内外にある。でも、意外に難しい題材だと思う。なぜなら、まさに「音楽をやる若者」というのはいつの時代にもたくさんいる訳で、音楽ジャンルが違っても彼らが共感できる作品でないといけない。同時に「音楽をやる若者の周辺にいる一般人」にもわかる映画にしないといけない。リアルな世界では、この両者はわかりあっているとは限らない。
しかし、本作は両者の認識の部分でわかりやすく橋渡しをしており、同時に音楽に向かう若者の心情をリアルに描いている。80分というコンパクトな時間の中に誰もが共感できる濃縮されたドラマがある。音楽をテーマに扱う映画は、シーンにもリズム感やセンスも良くいけない。本作ではひとつひとつのシーンが音楽的で、構図も含めて観ごたえがある。
▲ 上映前に監督のトーク。ファンよりブロッコリーの首飾りをプレゼントされてました!
主人公はニートのラッパー。レコード屋もない埼玉の田舎町から自分たちのラップを発信しようとしている。仲間はブロッコリー農家の手伝い、風俗店のバイト等をしている。ファションはそれなりにキメているものの、くすぶっている彼らは冒頭のシーンで「初ライブをやる!」という目標を決める。そこから、さまざまなドラマが動き出す。
ここからくり広げられるシーンは、笑いあり、泣かせるシーンが実に心をゆさぶっていく。ぼんやりとした生活から、仲間と世間と格闘している姿が描かれる。ユーモアだけではない、厳しい現実に彼らは直面していく。
▲上映後にメインキャストの3人と関係者によるライブ。劇中のラップはすべて俳優本人が行なっている。
ラストシーンは、詳しくは書かないがなんとも予想外であり、映画的であり、音楽的である。監督はラップ、ヒップ・ホップカルチャーというものを、借り物ではなく、しっかり認識したうえラストシーンを作ったと思う。フリースタイルのおもしろさ、興味深さも伝わる。本作はさまざま部分で余韻を残しているのが、まさに韻を踏んでる作品だと思った。