「第1回さっぽろ景観総選挙の結果発表」
2014.1.26(日)16:00-17:00
札幌駅前通地下歩行空間北2条広場西側(Sapporonorth2)
景観への思考〜個人の景観の記憶を集めること。
近所にその公園があった。朝昼晩、自宅を出るごとに、気分の良い時も、悪い時も僕はその公園を眺めた。すると心が落ち着いた。小さな空間の中に自然が多く「2001年」のモノリスを思わせる複数の石柱が配置されているのが気に入った。その公園の名は「宮部記念緑地」(北6西13)。有名な場所とは言い難いが、自分がそこに住んでいた時に必ず思いだされる「景観」の記憶である。
† 札幌市の市民主体の景観資源選出の取り組み
さて、「第1回さっぽろ景観総選挙の結果発表」とは何なのか? これだけでは、さっぱりわからない、という人もいると思うので、少し長くなるけど説明する。これは札幌市の市民主体の景観資源選出の取り組みのひとつである。「市民主体の景観資源選出?」とは、札幌市にある魅力的な自然や建築物等の風景は、それも大切な「資源」。それを市民の意見を取り入れて決めていき、共有することによって、今後のまちづくりにも生かすことを目的とした事業である。
市民が景観を意識する、というのはどういうことか。僕は景観をつくっているのは最終的に「人」であり、景観を意識することは「人」を意識することだと思う。また、景観はその場所の魅力で「人」をつなげる機能もある。そして、景観は自然に生まれ、自然に成長するものでもないのだ。誰かが守らないといけないものでもある。以上のあたりが僕が考える「景観の意識」である。
本取り組みはfacebook上での任意団体、札幌の好きな場所を教えあうコミュニティ「好きです。さっぽろ(個人的に。)と共におこなうことによって、ユニークな活動を平成24年より行っている。その活動の詳細は札幌市の該当ページの一覧でわかる。
本サイト編集者の僕もその中の企画のひとつ、昨年2013年6月に開催された、「井戸端会議 on 市電~市電に乗ってこれからの景観の話をしよう。」に講師として出演させていただいた。これは貸し切りの市電に一般の参加者と乗りながら、景観をテーマとしたメディア作りのワークショップをおこなった。楽しい企画だった。
†「景観まちづくりカードゲーム☆景カード」
さて、ようやく話は本題に戻ろう。本取り組みの最新企画が札幌の「景観まちづくりカードゲーム☆景カード」(以下 景カード)を制作することである。これは、札幌の景観や都市計画に関する情報を基に考案されたトレーディングカード(それぞれ図柄が異なる鑑賞用・ゲーム用のカード)。友達や親子でゲームを楽しみながら、景観や都市計画について考えるきっかけを作るために制作することになった。
景カードは全部48枚。カードに選ばれる景観候補を決めるために、SNSサービスである、facebookが利用され、昨年、市内の大型ショッピングセンターや公共施設等に巡回投票所を設置、市民による投票がおこなわれた。その結果発表イベントが本記事の「第1回さっぽろ景観総選挙の結果発表」なのである。
†「第1回さっぽろ景観総選挙の結果発表」とその後の展開。
タイトルのイメージとおり結果発表イベントもユニークな形でおこなわれた。会場の地下歩行空間にて実際の選挙速報TV番組ふうの構成で、運営委員による寸劇としておこなわれた。43位までがパネルで紹介されていった。そして、上位景観5ヵ所になると、それぞれの景観名のたすきをかけた運営委員が、景観に扮した「候補者」として登場し演説コメントする、という楽しげな演出あった。この場面になると、歩行空間を通行していた市民も「なんだろう?」と思ってか、足を止めている光景がみられた。
ベスト5は以下の結果となった。
1位「石山緑地」2位「北大銀杏並木」3位「東海大学のラベンダーフェスティバル大会4位「ファイターズ優勝パレード」、5位「札幌テレビ塔」(他ランキングは本事業のサイトを参考とのこと)。
結果をみて、どう感じられただろうか? 本結果により「景カード」は実際に制作され、3月に発行を予定。発行記念のトークイベントも予定されている。「景カード」にはゲームのためにそれぞれの景観に応じた「強さ」等も設定される。ゲームとしても全国的に注目される可能性があ
† 今回の企画から見えた、デジタルとネットの可能性。
今回のインターネットのSNSサービスを使用して、景観候補を募り、巡回投票所設置して、景観を決めるというのは、とても意欲的で実験的な試みであったと思う。僕は市民とインターネットのつながり、というのはまだ過渡期だとは思う。今段階のお年寄りだと、今も今後もネットを自分では利用しない層が多いと考えられる。でも、あと1〜2世代の後の年代は、ネットは生活に不可欠なツールになっていると思う。そうなれば、今回の試みも、候補選定から投票までネットでおこない、より多くに市民の意見を反映できるだろう。
話しは少しずれるが、景観資源を考えていく時、市民の声を捉えるのとと同時に、専門家の意見も取り入れる感じがいいと思う。景観資源には専門家ではないとわからない「ストーリー」があると思う。それを市民に伝えたり、学術的に記録するのが役割だと思う。また、市民の目で捉えた専門家ではとりこぼす景観資源というのもあるかと思う。景観資源の選出には市民と専門家の両方に意見というのも必要だと思う。両者をうまくリンクさせる仕組みつくりも大事だと思う。これにもネットは活用できるだろう。
行政の市民への取り組みのデジタル化というのは進むべき方向性かと思う。時代を待つまでもなく、インターネットの活用は行政はどんどん取り入れるべきだと思うし、facebookやYouTubeなどの無料で利用できるサービスも積極的に利用すべきだと考える。それには、コスト面や広報の手間を省くメリットがあると思う。もちろん、まだネットにつながっていない対象へのアクセス方法も確保していく用意する必要はある。
また、「景カード」もデジタルデータで、ネットゲームとして存在するのもおもしろいかもしれない。また、ゲームには興味がなくも札幌の魅力的な景観(観光)情報のアーカイブとして、スマートフォンなどに入れられると便利で楽しい札幌ガイドになるのではないだろうか。
Text & Photo by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)