NEWS: Sapporo Art & Culture
「荒巻義雄の世界 ―都市型宇宙船ニュー・ユートピア・シティーにむかって」
会期:2014年2月8日(土)~3月23日(日)
場所:北海道立文学館(中島公園内)
芸術を作り出すにはが必要なのだろうか? この展示にその疑問のヒントがあるかもしれない。会場は中島公園内にある北海道立文学館。道内出身の作家や関係のある書籍、資料が展示されている。書籍を閲覧できるライブラリーもある。ちいさなカフェスペースで休むのも楽しい。広い窓から雪国のシーンが感じられる。
1970年デビューのSF作家 荒巻義雄。小樽出身。現在は札幌を拠点に活動している。代表作は1990年代に発表した戦記シミュレーション小説「紺碧の艦隊」だろうか。ベストセラーであり「架空戦記もの」ブームのもとになった作品。アニメーションやゲームにもなっている。ま、SF作家以外にSF評論や伝奇小説、美術評論、詩と多義の顔を持つ。時計台ギャラリーのオーナーでもある。
さて、今回の展示企画は簡単にいうと作家 荒巻義雄というクリエイターを知るためのさまざまなキーワードが散りばめられた内容。展示の仕方も工夫されていて、僕の印象は作家の書斎(または内面世界)に迷い込んだような錯覚をおこしそうになる。そして、どこか人間味を感じる暖かみのある雰囲気がある。冷たいアーティステックはここにはない。展示では著書が読めたり、美術作品や、オブジェ、資料、パソコンを使ったものなど、いろいろあって楽しめる。
僕は正直にいえばこの作家については名前を知っている程度なので、本企画を楽しめるか少し不安だった。見終わった印象としては本企画はファンならたまらない内容だと思うし、ファンでなくても北海道で活躍するクリエイターの内面を知ることができる興味深い内容かと思う。そう感じられるのは、作家であり、評論や美術関係の活動などのクリエイターとしての「深さ」があるからだと思う。
クリエイターはいろいろなものに興味を持ち、それが作品に反映されていく。何に興味を持ち、それを自分なりにアレンジしていく。僕はその過程がオリジナリティだと思う。興味の対象は自分の表現分野から離れていくのがいいと思う。例えば、小説が他の小説に影響を受けるより、もっとまったく違う、分野から影響を受けることが僕はいいと思っている。
荒巻義雄の興味は深く広い。しかし、その作り出す世界観には統一された美意識が感じられた。
作家との世代差を感じるけど、そこが新鮮だしクリエイトすることの力強さをも刺激となった。雪の中島公園を歩くのも悪くない。ひとりの魅力的な作家の内面をのぞきに行ってみてはどうだろうか。
Text & Photo by Shinichi Ishikawa(NUMERO DEUX)