WEB MDEIA NUMERO DEUX NEWS No.15017
札幌では珍しいと思う、
「スチームパンク」テーマにしたエキシビション。
でも、実は「札幌」に似合うかもね。
札幌中心部の碁盤の目になっている区画。歴史を感じさせる建物の少なさ。ビルに囲まれた時計台。ゴムタイヤの地下鉄から感じる結果的にレトロな未来感。自分の住む札幌の無機質さを感じたり、そこに個性を感じることもある。札幌というまちの話。
そして人の話。人って「自分は自分」でありたいと思うけど、同時に「他者と共有」したい、という気持ちもある。それが自分の趣味嗜好と合わさって、その人の「ファッション」が形成されていると思う。その強弱はあると思うけど誰にでもあることではないかな。
「ファッション」とは服装だけではなく、音楽やそのほかの文化・芸術、趣味嗜好まで含んだ考え方、ライフスタイルを指す場合もある。つまり、こういう服装なら、こういう音楽聞いたり、本を読んだり、ビジュアルを考えたり、こういう遊び方をするよね、という感じ。すると、コミニュティも形成され、その中でカルチャーが育てられていく。そのはじまりは、服装とは限らず、音楽の場合もあるし、文学の場合もある。
「スチームパンク」とは、今書いてみた広い意味での「ファッション」のジャンルのひとつ。説明すると、もともとはSF文学のジャンルからはじまった。そこからビジュアルイメージがいろいろ出て来て、それがひとつの(大きな意味の)ファッションとなった。「スチームパンク」の認知度って「ゴスロリ」(ゴシック・アンド・ロリータ)に比べると、SF好きなら知っているけど、その他だと愛好家が好きなレベルという感じだろうか。ただ、最近は「スチームパンク」という名称を知らなくても、そのティストが好きな人って増えているような気もする。ふと思うけど「ゴスロリ」って「スチームパンク」と相性もいい気もするなぁ。
ではでは「スチームパンク」ってどんな感じ?というと、これも確定的な定義がある訳ではなくて、アーティストや愛好家によって解釈の仕方はいろいろだけど、僕の定義を書いてみると、産業革命時代の先端テクノロジーとしての「歯車」、エネルギー源としての「蒸気」(スチーム)という時代のまま、未来まで進んでしまった世界。社会様式や風俗もビクトリア王朝の雰囲気が濃い、という感じだろうか。例えばコンピューターの元になった初期の計算機は多くの歯車で作られていた。それが、真空管、半導体と変化していくのだけど、それが「歯車」を使ったまま、どんどん進化してしまう、動力源も蒸気から、石炭、ガソリン…と進化していくの蒸気のまま進化してしまう。それらの(もうひとつの、架空である)ハイテク技術囲まれながら、社会全体の雰囲気はヴィクトリア王朝。クラシカル(アナログな)技術のままハイテクな社会が実現されてしまった世界観だと僕は思っている。その魅力はアナログ感なんだろうね。
「スチームパンク」をテーマにした展示会が札幌のギャラリーで開催された。会場である「NECCO」 は、アンダーグランドな企画を感じさせる、市内では数少ないギャラリー。マンションの一室というのも実にアンダーグランドでいい。会場では11名の作家による、ぞれぞれのスチームパンク感を表現したものが平面・立体作品の形で展示されている。最初にも書いたとおりスチームパンクには明確な定義がある訳ではないので、自分と作家の定義の違い、みたいなものを考えながら、観るのも楽しかった。上の写真は出品者⑧堂の作品で、完成度高く、かつ僕がイメージするスチームパンク感が出ていて、いいなぁと思った。僕自身は、スチームパンク自体に特に深い思い入れはないけど、これが好き!という人の感性は理解できるし、札幌でもオリジナルのシーンができたら、いいなぁと思う。
会場を出ると、外は暗かった。真っ暗な空と、走る市電を観ていると、北海道の開拓時代を舞台としたスチームパンクもの、とかあったらそもしろいなぁ、と思った。屯田兵のスチームパンクふうとかカッコいいよね、と空想しながら夜の街を歩いた。
「 雪花蒸気機関展」
event gallery space
SAPPORO UNDERGROUND「NECCO」(S1W12)
2015.10.11~10.18
平日:17:00~21:00/ 土日・祝:13:00~18:00
展示作家: 赤錆 / 藍桜 / 北國小雪 / 伍七 / コニシダイスケ / はいいろ / ⑧堂 / mosako / 水中 蝶生 / 裕樹 /鈴爾
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)