WEB MDEIA NUMERO DEUX NEWS No.15024
札幌のアートやカルチャーに関するニュース
合理性は必要だけど、
それだけでは生きていくのはつらい。
思い出してください、僕たちは感情に支配される人間です。
僕は生きるためには合理的な思考は絶対必要だと思う。僕自身はその傾向が強い方の人間だとは思う。ただ、同時にアート作品を観て、合理性だけでは生きていけない、と思うのである。これは矛盾ではない。どちらも必要なのだ。
あるペーパーを読んで考えた。古民家、つまり古い住宅のこと。その定義は「戦前からある」というのがひとつの基準なようだ。全国的にこうした古い家をリノベーションして、住む、またはお店にするのが注目されている。僕は古民家に住んだことはないけど、古民家をリノベーションしたお店には行くことはある。そこには大げさだけど非日常な感覚がある。そしてなんとも魅力的だ。
その訳を自分の内心に問いかけて考えた時、合理的ではないからだと思う。合理性のなさに魅力が隠れている時がある。そこで思う。世の中を合理性だけで考えるのもさびしい。僕はアートが好きだ。アートの世界は合理性で考えていけないし、計ってはいけないと思う。なのに、アート以外のもの、例えば建物については合理性を求める。それは当然ともいえる。建物はアートと違う。合理性が求められる。たしかに、建物は使い勝手がいいのが一番に決まっていると思う。でもね、合理性ってなんだろう、というのも考えることもあっていいと思う。だって、おもしろいものって、魅力的なものって合理的だとは限らない。合理性を悪だとは僕は思わない。でも、合理性だけで生きるのもしんどい気がする。だって、人間は感情(時に非合理的)抜きで生きられないのだから。
齋藤周は札幌在住のアーティスト。おもに平面作品を中心に制作している。今回の展示では、世の中に存在するかたちをテーマに、そのあり方について考えさせる展示となっている。実は、最初に書いたテキストは会場にあった本展示に関する齋藤周のペーパーに影響を受けて書いたものである。展示に来た際にはぜひ目を通していただくと本展示がより楽しめると思う。会場は20点の平面作品に加えて、床面にはちいさな立体作品もある。壁面と床面に作品があると、ちいさな世界が作られている印象が楽しい。僕が齋藤周の作品について感じるにはカラフルな中にある優しさと自然(不自然と逆の意味の)。大抵、色を複数つかう作品は僕の気持ちを緊張させる。でも、齋藤周の作品は逆に気持ちを安定させる。それは、繊細な色選びなのか、色の中の線の魅力なのか、どれかはわからない。そして当たり前だけど、そこに合理性を感じる訳でもない。でも好きだと感じる自分がいる。
会場のクラークギャラリー+SHIFTは、札幌中心部にある観光スポットとしても人気のある二条市場のあるエリア内にあるギャラリー。 北海道のクリエイティヴなアイテムを集めたお店、MUSEUMの2階にある。そして、この建物も大正時代につくられた古民家をリノベーションした建物である。この建物を観るだけでも札幌の古い建築物を鑑賞できるスポットになっている。
僕はこれからも、合理的な思考を軸に生きていくとは思う。でも、別にそれがベストだとは思っていない。ただ、それを軸にしないと僕の能力では生活できないのだ。非合理に安らぎを求めて。合理的に生きるのが自分のライフスタイルだと思っている。
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
齋藤周展「かたちの心地」
会期:2015年11月1日(日)~29日(日)
時間:11:00〜19:00(月曜日・第三火曜日休廊)
※11月23日は祝日のため営業、24日が振替休廊
会場:クラークギャラリー+SHIFT
住所:札幌市中央区南3条東2丁目6 MUSEUM 2階
TEL:011-596-7752
http://www.clarkgallery.co.jp