NUMERO DEUX NEWS 16002
札幌のアートなニュース。
自然というメディアに
僕たちは離れて行く。心も離れる。離れない表現。
自然とは、今どこにあるのだろうか?自宅の窓からみえるのはビル。その合間にみえる草木。それは自然なのか?植物という点では、そうなのだけど、その地理的存在は人工的に植林されたものだと思う。それは自然といえるのだろうか。それでもビルの合間のある草木は美しい。でも、それはもう、自然とのコミニュケーションではなくて、すべてが終わった後の感傷のような気がするのだ…そんな考えも忙しい(と思っている)日々の中でただ通り過ぎていく。
人間も自然の一部なのに、自然を切り離して考えるようになった。それで発展することもあったのだけど、今は、その発展がひとつの限界にきていると思う。だからといって、原始生活に戻る訳にもいかない。今必要なのは「自然を考えること」だと思うのだ。そのキッカケとしてアートの役割はとても心強いと思うのだ。そんなことを僕は本展示で感じた。
澁谷俊彦は、1960年 北海道室蘭市生まれ 札幌在住。2006年より「渋谷俊彦」改め、「澁谷俊彦」として活動開始。ステートメント:北国の地域特性を活かした新しいアートの在り方は、冬の大地との強い結びつきにあると考えます。私のランドアートは環境と融合し、自由に戯れ合うことを目指します。自然と対地するのではなく、寄り添うように共生すること。自然を異化し、もう一度自らの営みやそれをとりまく環境に出会い直す媒介として作品が機能する時、作品と自然の領土を間借りしてその一部を制してまで作品を置く価値があると考えます。(澁谷俊彦ウェブサイト、プロフィールより)
今回の展示作品は、作家自身が収集した植物を、その自然な形状をそのままにアクリルボックスに収納した作品となっている。そのボックスの一部には蛍光塗料が施されており、それによって、単なる標本的なフォルムを超えて、観る側になにかを考えさせるフックとなっており、同時にアート作品としての美しさも作り出している。ここに僕はアートの役割があると思う。ギャラリーに展示されるアクリルに封じ込められた自然。それはひどく人工的にも思えるが、アートとして「表現」になることによって、観る側に「見過ごせない」印象を残す。
僕は本展示を観て、自分がこれから自然と、どうつき合っていくか考える機会を得たと思う。ギャラリーに展示される「自然」というのは一瞬、世界の飽和状態も感じさせる。でも、考えてみると自然というのは常にアートの重要なテーマになってきた。 澁谷俊彦の作品は、自然の素材をできるだけ手を加えることなく、メディア化した優れたアート作品だと思う。そこには純粋さを感じた。
会場のクラークギャラリー+SHIFTは、札幌中心部にある観光スポットとしても人気のある二条市場のあるエリア内にあるギャラリー。 北海道のクリエイティヴなアイテムを集めたお店MUSEUMの2階にある。そして、この建物も大正時代につくられた古民家をリノベーションした建物である。この建物を観るだけでも札幌の古い建築物を鑑賞できるスポットになっている。
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「WHITE COLLECTION 3 澁谷俊彦 インスタレーション 2016」
会期:2016年1月6日(水)~31日(日)11:00~19:00(月・第三火休)
※11日は祝日のため営業、12日が振替休廊日になります
会場:クラークギャラリー+SHIFT(中央区南3条東2丁目6 MUSEUM 2階)
http://www.clarkgallery.co.jp