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NEWS No.16010 「500m美術館vol.17 500メータ—ズプロジェクト003『ズレ展』」

2016.02.07

500m美術館vol.17 500メータ—ズプロジェクト003「ズレ展」

NUMERO DEUX NEWS 16010
札幌のアートなニュース。

「多様な価値観」という
いつまでも続く宿題に、とりかかる。交際を考えよう。

「価値観の多様化」という言葉をいろいろなところで、読む・聞く。記事の最後のしめくくりは、 このフレーズで着地する場合をとても見かける。そのバリエーションは無限に続くようだ。その意味は「今の時代はいろんな考え方や捉え方があるよね」ということだと思う。でも、それは僕は「そうなった」というより「そうだったのが無視できなくなった」ということが近いと思う。きっと人って本質的には、それぞれの価値観を持っていると思う。ただ、歴史的にはその個人が持っている価値観を表明したり、それに基づいて生活することが難しかったのだと思う。

それが職業の変化、インターネットに代表される情報化社会によって、職業選択の自由の拡大、手のひらにあるスマートフォンなどで世界中に自分の考えを発信、または他人の考えを受信できるようになったとき、否応無しに「価値観の多様化」を自分も他者の社会も「考えない訳にはいかなくなった」「無視もできなくなった」ということだと思う。

多分、「多様な価値観」問題というのは、人間の精神が大きく変わらない限り、永遠の宿題みたいなもので、解答を得られないものだと僕が考えている。ただ、だからといって、放り投げる訳にはいかない。これは学校に提出する宿題な訳でもない。僕達は、このできない宿題を抱えながら、生きていくしかない。ここにスッキリ感のある解答を得ることはできないし「多様な価値観」に対してスッキリするというのは僕は逆に怖いことだと感じる。できることは、多様な価値観に許容しつつ、自分の価値観を持つということだと思う。そのためには、他者の価値観に興味をもって考えることではないだろうか。僕達は「多様な価値観」と交際すべきなのだ。

本展示は、価値観の多様化、その中で発生する認識の違いを「ズレ」として、それをテーマに異なる分野の3人による作品を展示している。その3人とは、視覚的言語としてのドローイングをおこなう美術家、鈴木悠哉、地域や食を伝えるディレクターとしても活躍するコピーライター池端宏介、ユーモア、アート、教育をテーマにスケルツォという名義で幅広い活動をおこなうパフォーマー加賀城匡貴。3人それぞれの「ズレ」の捉え方にはもおそらく「違い」(=ズレ)があり、それらを観る人にも「ズレ」がきっと発生する。合わせ鏡の中で揺れていくような「ズレ」を、どう理解して許容していくかを考える。そういった価値観について考えるユニークで意味のある展示企画だと思う。難しく考えることはないと思う。楽しみなから、作品を観てみよう。そして、多様な価値観に対して柔軟な頭を持とう。

札幌大通地下ギャラリー 500m美術館は、札幌市営地下鉄の大通駅、その構内にある隣駅のバスセンター駅前をつなぐ通路。その通路の壁面を利用した市が運営するギャラリーである。2006年から展示がはじまった。駅施設内にあるギャラリーとしては国内最長のものである。地下通路が多くかつ、冬が長いため地下通路の利用が多くなる札幌にはひとつの「地下文化」ともいえるユニークな美術施設である。

Text by 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

500m美術館vol.17 500メータ—ズプロジェクト003「ズレ展」
会期 : 2016年1月30日(土)~2016年3月25日(金)
会場:札幌大通地下ギャラリー 500m美術館


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