卒業制作とは、どんな気持で作るのだろうか?
卒論も書かないで、フラットなままで社会に出た自分。今考えると書けば良かったと思う。でも、タイムマシンで今の記憶を失って戻る。そうすると、やっぱり卒論は書かなかったと思う。いや、書けなかったというべきか。その時の僕は、良く言えば吸収ばかりしていた。悪くいえばどこまでも受け身であったのだ。毎日はゆっくり流れていって、本を読んで、レコード店に開店直後に行く。夜は遠かった。来週はもっと遠かった。
道都大学美術学部の卒業制作展を観る。作品を観ながら、僕が考えるのは作品のクオリティというよりも、僕は本テキストの最初に書いた部分。つまり、作品を作った学生の気持はどんな立ち位置なのだろうか?という、まったく余計な詮索である。
卒業する、という点をどう捉えているのか。今回の制作がひとつの人生の区切りと考えるのか、今の日常の延長と考えるのか、僕のようにそこまで深く考えていないのか、そんな心情を想像しながら作品を見ていく。学生の展示はそんな楽しみ方が僕は好きだ。
なぜなら、いろいろな気持ちで作品を作る。それはまさに学生の特権なのだから。そして、どんな気持ちでも、今の段階では正解、不正解はわからないのだから。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「道都大学美術学部『卒展+2017』」
会期:2017年1月31日(火)~2月5日(日) A室 10:30-06:30
会場:大丸藤井セントラル7Fスカイホール