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NEWS No.17022「モルエラニの霧の中(第一部・特別試写版)』

2017.04.22

モルエラニ

ひとつの「地方」を全面的に舞台にした「映画」をつくる。
その作品の成功はどこにあるのだろうか?僕はそれは「その地方なんだけど、そこではないどこか」という印象を感じさせる架空の物語(フィクション)となった作品になることだと思う。

その詳細を文字で説明するのが難しい。実存する地方にフィクションが引っ張られ過ぎない、と言い換えることもできる。実存する地方は強力な存在だ。その土地を知れば知るほど、フィクションが動きにくくなるかもしれない。そのジレンマを調整してフィクションを構築していく。

そうした映画が、観光PRとしての効果もあるのは嬉しいこと。でも、それは映画に求められる1番じゃない。それなら観光地紹介ムービーになってしまう。雑な言い方になるけど、ただその地方の観光場所を映画に中にインサートしていっても、その地方の映画になる訳ではない。そこに映画特有のフィクションとリンクして作品としての映画になる。その結果として「行ってみたくなる場所。映画というフィクションによって、地方の一部が新しい意味を持つのだ。

繰り返せば特定された地方の舞台の映画であっても「いかに良質のフィクション」をつくるかが、重要だと思う。そして、ポイントとしては現実の地方とは、少し距離感があったほうがいい。そのほうが良いフィクションがつくることができる。なぜなら、その距離感の中に観る側は感情移入する隙を見つけるのだ。

監督の坪川拓史は室蘭在住。東京で劇団、映画づくりをおこなう2011年より家族とともに室蘭に移住。現在は登別の「日本工学院北海道専門学校」で講師を務めながら、映画づくりをおこなっている。 2017年4月15日(土)と23日(日)の2日間に坪川拓史監督作品上映会が開催された。「アリア」(2007年)「ハーメルン」(2013年) の過去の2作品に加えて、現在、まだ制作している室蘭を舞台にしたNPO法人 室蘭映画製作応援団制作の室蘭を舞台にした「モルエラニの霧の中(第一部・特別試写版)』が上映された。

「モルエラニの霧の中(第一部・特別試写版)』を観たので、その感想を書いてみたいと思う。

本作の基本的なプロットは「室蘭」を舞台として、情緒性を強く感じるストーリーが展開されている。静かなリズムの中で映画は進行していく。人物たちのセリフは少なく、同時に多義的。軸になる物語はシンプルなので、置いていかれることはない。ただ、ひとつひとつのシーンが非常に丁寧に撮られていて、いい意味で僕は少し息が詰まる感じがした。その間が惜しいのだ。

なんか、ひさびさに「映画」の表現をたくさん観たような気がした、というのが一番短めな感想。モノクロの映像がより映画というフィクションの深度を高めてくれる。室蘭を在住の人なら、おなじみの場所が次々と登場していくが、そこに不思議な距離感が生まれている。「知っているところだけど、ちがうような」。そんな印象が僕の心に生まれる。

室蘭は北海道でも不思議な場所だ。自然と、巨大工場群(と港、船)が同居していて、北海道生まれの僕でもどこか特殊な場所だと意識する。そして、歴史を感じさせる場所もたくさんある…これらの要素はフィクションをつくり上げるには絶好の場所なのかもしれない。

とりとめのない感想になってしまった。その理由はまだ感想を語るより、この映画をもう一度観たいと思っている。つまり好きな映画なのです。また観られる機会を楽しみにしたい。「映画」っていいなと思い出した機会だった。

ishikawa

Text by
アート・メディアライター  石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「坪川拓史監督作品上映会」

会 場:
社会医療法人 製鉄記念室蘭病院 がん診療センター 3階大講堂
(室蘭市知利別町1-45)
http://www.nshp-muroran.or.jp/s01/s01-04.html

■上映日時
●4月15日(土) 12:30開場
第1回 13:00~14:50 『アリア』
第2回 15:20~17:40 『ハーメルン』
第3回 18:10~20:30 『モルエラニの霧の中(第一部・特別試写版)』
●4月23日(日) 12:30開場
第4回 13:00~15:10 『ハーメルン』
第5回 15:40~18:00 『モルエラニの霧の中(第一部・特別試写版)』
■料 金
●前売券
1枚のみのご購入 1,200円
複数枚のご購入 1,000円/回 (任意の上映を選択可、一括購入の場合)
●当日券
上映1回のみ鑑賞 1,500円
上映2回以上鑑賞 1,200円/回 (任意の上映を選択可、一括購入の場合)

 


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