つつむ、つつまれる。なにかを渡す時、そのなにかを包む。そんな決まりごとが体に馴染んできたのはいつだろうか。贈り物を包装紙でつつむ。コンビニエンスストアでなにかを買えば、ちいさな袋から、大きな袋までさまざまなサイズで商品がつつまれる。例外は「シールでいいですか?」。ここで、ふと大量のシールで隙間なく包まれた商品を妄想する…
現実に戻ろう。包む一例として印象的なのはセロファンのキャンディーの包だ。中身をしっかりとした密着した包装で、両側をねじって包まれている。食べる時は、両側のねじれをほぐすと簡単に取り出すことができる。おいしい中身を口に入れたら、残るのはしわしわになった包み紙。それには独自の存在感がある。しかし、再利用は難しいので捨てられる運命だ。 ポリネチレンやビニールと似ているが違う。特長は、ねじったときにそのままの状態であること。だから、キャンディー等の包装につかわれる。
そんなセロファンに惹かれるアート作家、鈴木隆。本作ではセロファンを主役にした作品を作り上げた。こうした、ひとつの「素材」に着目して、シンプルに作り上がる作品は僕は好きだ。ひとつの「素材」とは「源」である。複雑にいろいろな組みあせで、構成される今の現代の社会。素材には、さまざまな機能と歴史が隠されている。そういえば、昔のアーケードゲームもモノクロだった。それにセロファンを重ねて色をつけていたゲーム機を見たことがある。これはセロファンのとても技術的で、文化的なエピソードだと思う。素材には、なにかが隠されている。
Text by アート・メディアライタ 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
鈴木隆 cello 500m 美術館vol.22「北の脈々 -North Line2-」」
会期:2017年4月15日(土)~7月5日(水)
会場:札幌大通地下ギャラリー 500m美術館(札幌市営地下鉄大通駅内)