「いいハコだね」。音楽のライブをおこなうライブハウスのような小規模な場所。それを「ハコ(箱)」ということがある。いい表現だと思う。「会場」というと堅いし「ホール」では味気ない。「空間」というのは好きだけどクールすぎる。敬意と愛着をこめて「ハコ(箱)」がしっくりくる。これには単なる呼び方だけではなくて「ハコ」の魅力も隠されている。いいハコでライブをやりたい。それはミュージシャンの夢のひとつ。ハコとは単なる設備ではなくて、音楽(表現)を間接的に構成する要素だということだ。そして、これは作家とギャラリー(ハコ)との関係と置き換えることも可能なのである。
本展示では、札幌市円山にある家具工房が制作した「箱」に8人の作家を作品を「展示」している。これは大変おもしろい試みだと思う。同時に意外に見たことのない企画である。本作では、作家はコンパクト(持ち運び可能な)な「ギャラリー(=ハコ)」を手に入れたことになる。つまり、作家は作品とそれを展示されている「空間=(ハコ)」を手に入れているのだ。つまり、作家はもう、変化するギャラリーの構造や雰囲気を考えねなくてもいい。この「箱」を置いた場所がギャラリーとなる、と考えるの楽しい。観る側にとっても、こんなコンセプトの作品があるのはコレクションする楽しみを増やしていくものではないか。箱には素敵な可能性がある。
Text by アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「『箱からはじまる物語』展」
会期:2017年7月12日(水)~23日(日) 11:00~19:00
会場:ト・オン・カフェ(南9西3)
[箱製作] Zoo factory
[出品作家] jobin. ・ReguRegu・wataru.N・本田征爾・森迫暁夫・林美奈子・山本祐歳・中村得子