みなさんは「Pepper」を知っているだろうか?ソフトバンクショップで販売されている人型ロボットである。小学生低学年くらいの身長があり、存在感ある。お店での待ち時間、僕は「彼」に相手にしてもらう。彼との会話で、独特のカン高い声の次に印象に残るのは「手」である。そこは他の部分に比べて声とともに精巧な動きをする。顔は固定なのに「手」が会話をサポートする表現方法として用意されている。なにかを持つための道具としての手ではない。表現するための手なのだ。
堀内まゆみは、赤ちゃんからお年寄りまで誰でも踊れる「コミュニティダンス」に興味を持ち、身体感覚・ことば・コミュニケーションを通じた作品づくりを、舞台やパフォーマンス、映像、ワークショップを開催して模索している。本作品では、0歳〜92歳まで老若男女56人の方々に手を動かしてもらい、それをカメラに収めた手のインプロヴィゼーション(即興)が12のディスプレイに繰り返し表示されている。
そこにあるのは「手」だけだ。でも、なんとその表情が豊かのことだろう。なんとも愛しくもあり、意図していることを想像したくなる。話は少しズレるけど、手に対してフェティシズムを感じる人もいると聞く。そういったことも、こうした手だけ切り取った場面を見ている、その気持もわかってくるようだった。
堀内まゆみが着目した「手」の持つ表現は、コミュニケーションとアートを考えさせる大きなテーマだと僕は思った。僕はいつも自分の手から、何を発信しているのだろうか。それを考えることが大切なのだ。それを気がつかせてくれる作品だった。
Text by メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「JR TOWER ARTBOX 堀内まゆみ 手の手のインプロヴィゼーション(即興)」
会期 : 2017年9月1日(金)~2017年11月30日(木)
会場:JRタワー1階東コンコース(JR札幌駅直結)