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NEWS No.180203「林 紗綾香 / 空ろ木の花(うつろぎのはな)」

2018.02.20


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普遍性の再発見は、
ベッドのスマホをやめさせる。

最近、ベッドの枕元にスマートフォンを置くのをやめた。そんなに深い意味はないが、そこにあるとついつい使いすぎてしまうからだ。使うこと自体悪いことではないし、それは好きな行為でもある。でも、好きなことが必ずしも自分に良いことにつながらないこともある。ベッドの中のスマホはそんな行為だった。僕は寝ながらSNSに反応し、メールに返事をする。そう、寝ながら。そこには風景はなく。指と液晶ディスプレイだけが浮かび上がる。

私達は、日々たくさんのコミニュケーションをおこなう。人と人は交流する。口から言葉を使って。カラダを使って。機械を使って…多くなれば、なるほど僕達の感覚は麻痺していく。きっと、大昔のコミニュケーションとは、一大事ではなかったのか。スマホどころか、電話もない手紙もない時代。その当時は「その時」に人の口から出る言葉、仕草というのは、とても大切に扱われたと思うのだ。物理的距離もこえられず、記録もされないコミュニケーションというのは、なんて貴重なものだろうか!

林 紗綾香(はやし さやか)の本作では、2つの「窓」に映る情景を描くビデオインスタレーション作品となっており、1日という時間の流れの中で昭和の日常を映し出す内容となっている。そこには、ノスタルジックというより僕には大切な「発見」があった。普遍性の再認識である。

平成も終わろうとしている今。なぜ「昭和」なのか。それはきっと、わたしたちがもっともリアルに感じられる「昔」ではないだろうか。例えば、軽い読者等にある「昭和あるある」という思想は、実は深いレベルのものであり批評性や記念性、進化も含めた記憶断片だと僕は思う。

本作にミニマムな映像の中に浮かびあがるイメージはなんとも愛しく、ノスタルジックと同時に現代的でもある。つまりここにあるのは「普遍」のイメージなのだ。僕は現代のアートにおいて「普遍の表現」にむかう、というのはとても大事なことだと思っている。なぜなら、現代スマホ片手に生活する僕達がもっとも忘れるのが「普遍」なのである。普遍性から離れれば離れるほど僕達は混乱してしまう。僕がベッドからスマホを手放したのは「寝る」という行為を邪魔しない普遍の再発見だったからかもしれない。

ishikawa

Text by  メディアリサーチャー石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

「JR TOWER ARTBOX  林 紗綾香  /  空ろ木の花(うつろぎのはな)」
会期 : 2017年12月1日(金)~2018年2月28日(木)
会場:JRタワー1階東コンコース(JR札幌駅直結)

 

 

 


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