「胸中山水」 白川深紅 第9回500m美術館賞
山水のかたち
僕がスマホを片手に、風景を語る試み
レンズは4つが望ましい
20代のころを、ぼんやり考える。その時僕はオーバーにいえば物騒なところ住んでいた。若いころは都市のゴミゴミした場所が好きだった。目標は映画ブレードランナーのような草木の一本もない、で不潔感のある街で。そんな場所に好んでアパートを借りた。
後悔はないが、今はそういう気はしない。今でも、まったくのインドア系であるが、自然は好きではある。なんて書くと矛盾だろうといわれそうだ。でも、思うの自然に惹かれるのは趣味というより、人間の精神のバランスだと思うのだ。
20代の僕は、自然はいらなかった。それは、つまりバランスが悪いだけの問題だ。だから、インドアでも自然は好きなのは矛盾にならない。まだ、あまり人間ができてなかったのかな、と思う。今だけど。今だって、自然バンザイ!という訳でもない。でも、自然がそばになるとシンプルに楽しい。
自然には2種類ある。実際の自然と、自然をイメージさせる表現である。現実とアートとも言い換えることもできるだろう。この2つは実は、そんなに違いないと思ってる。感じることだから。
しかし、都市で自然を感じるなら、トリガーが必要だ。今の時代、単なる自然の写真(=コピー)では、逆に私達は感じなくなっているのではないか。だから、新しい複合ビルのそばにも木を植えるような工夫は大変大事なのだ。
そして、イメージで自然を、アートでつくることは
もっと大事になってきている。なぜなら、心に交流していくから。
白川深紅の本作は、自然(=山水)である。ガラス越しにハッとさせるインパクトすぎると、穏やかなに想像を巡らす。なかななか難しいもしれない。いや、深いというところか。それが、アートの楽しみだとは思う。下にある石がいいアクセント。思考が下に落ちきらず、また上にあがっていく。今後がとっても楽しみな作家だと思った。
500m美術館vol.37
第9回500m美術館賞入選展
会期|2022年2月12日(土)~4月13日(水)
会場|札幌大通地下ギャラリー500m美術館
Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX) Facebook / Twitter