NEWS: Sapporo Art & Culture No.14
NUMERO DEUX Dalog in a cafe カフェでの会話
カフェの会話から生まれる、または伝わる何かがある。今週末2014年4月26日(土)に市内ギャラリーカフェにて開催される音と映像のライブイベント「Vertical Horizontal #01」。その主催者の加藤智諭と平日の夕方、市内カフェで「会話」をしてみた。その「会話」より本イベントの魅力を伝えていきたい。
加藤 智諭(Vertical Horizontal) ×
石川伸一(NUEMRO DEUX)
▼ 会話のはじまり
石川伸一(以下I):加藤さんとしっかりお話するのはひさびさですね。4年ぶりくらいかもしれない。では、早速始めます。加藤さんはこのライブイベント「Vertical Horizontal」の発案者だそうですね。
加藤智諭(以下K):そうなんです。でも、言い出したというだけで。他の運営メンバーに多くの部分を担ってもらっていて。僕が一番やってないので、非常に申し訳なく、ありがたいと感じてます(笑)。
I:加藤さんはテクノやエレクトロニカのサウンドクリエイターであり、1990年代から札幌でインディペンデントレーベルやイベント活動をしてましたね。懐かしい感じがします。初めて会ったのもDJバーでの主催イベントですね。
K: そうですね。そして、そのレーベルやイベントでの活動の後のしばらく、一昨年くらいまで、音作りをはじめとしてブランクの期間がありました。でも、ここ最近Soundcloudで自分の作品をアップしたり、それを聴いてくれたイタリアの電子音響系のレーベルからリリースの話があったり、札幌のイベント、エレキシネスに誘われたりしました。やろう!と決めて再び、という感じではなく自然な感じでモチベーションがあがってきて、またイベントをやりたいなと思ったという経緯です。
▼ 札幌の1990年代のシーン。
I:僕の印象では、札幌では今より1990年代くらいのほうが、テクノのイベントがいろいろ動きがあった印象があります。リリース活動とかも。
K:昔は機材やインターネット環境が今よりずっと揃ってない割には、いろいろな札幌のインディペンデントなアーティストががんばっていたと思います。コンピレーションアルバムを作ったり、イベントを定期的にやったり。テクノの「シーン」が札幌にあったと思いますね。
I:僕も昔に比べて、クリエイトしたり、コミニュケーションするツールが昔に比べると飛躍的に進歩した割には、ライブやイベント等の外からみえる活動はあまり目立たない印象があります。
K:今の札幌にアーティストが少ない訳ではないと思います。札幌で活動していて、道内外から高い評価を得ているアーティストは何人もいます。ただ、それだけでは「シーン」にはならないと思うんです。僕の考える「シーン」というのは、たくさんのアーティストがもっと活発に動いている状況なんですよね。今、東京や関西圏などにはネット・レーベルを中心としたつながりによって、イベントやリリースが活発におこなわれいて、集客もできている。そういう状況になって「シーン」があると言えると僕は思います。
I:たしかに「シーン」というのは、ただ優れたアーティストが存在する、というだけでは成立しないですね。アーティストとそのリスナーが多数存在して、リリースやイベントが同時多発的にある状況があって、はじめて「シーン」といえるかもしれない。有機的な感じが必要だと思う。
K:そういった意味での、電子音楽、特にエレクトロニカやアンビエントなどの様なジャンルにおける「シーン」が僕の知っている限りでは今の札幌にはまだ確立していないと個人的には思っています。 でも、ネット上での首都圏や関西圏などからの情報をみると、一部のジャンルやアーティストたちを指して「札幌にはシーンがある」的な捉えられ方がされている節があって、いや、実は今の札幌にはそれだけじゃ無いと感じて。だから、「シーン」を作りたいというのが今回のイベントの動機のひとつになっています。
▼ イベントが作り出す「シーン」
I:イベントは「シーン」の形成にはとても有効ですね。リアルな「体験」の場というのはわかりやすいので、コアな層だけではなくて、いろいろな人に興味を持ってもらう可能性がある。それに、今は、モノを買うという物質的なことよりイベントのような「体験」に時間やお金を払おうという人が増えていると感じてます。
K:エレクトロニカ、アンビエントのイベントというと、小難しいイメージがあるけど、そうでもないよ、というのを伝えたい、というのも今回のイベントを企画した理由のひとつですね。
I:僕と加藤さんは、ほぼ同世代ですね。僕たちの世代って、インディペンデントなクリエイト活動を考えた時、インターネット以前の状況と、その以後の両方を体験している世代だといえますね。昔はイベントやリリースの宣伝といえば、フライヤーを作って配るしかなかった、すごくアナログな時代と今のネットを活用できる両方を体験している。
K:そうですね。インターネット世代からのクリエイターからみるとリアルのイベントをやる、ということはとても非効率的なことに感じるのかもしれないですね。実際、イベントの企画って手間も時間もお金もかかりますし。
I:僕も紙やウェブのメディア作りに加えて、時々イベントを主催するけどイベントは大変。手間がかかるし開催日までリアルタイムですべてが動く、当日も、もちろんリアルタイム。一時停止はできない。動きはじめたら立ち止まってじっくり考えるのもほぼ無理。
K:イベントは大変ですよ。きっと、そんなことしなくても、例えば音楽ならSoundcloudやBandcamp、映像ならVimeoの様なネット上のサービスで作品を発表すれば楽だし、世界中に発信できてリアクションも得られるのだから、それで十分じゃん、という考え方もあると思う。 でも、僕はイベントというリアルな場で、出演者とお客さん、出演者同士、お客さんとお客さんが直接接することによって生まれてくるパワーや化学反応があると信じている。だからネットだけで完結させないイベントというフィジカルな場をつくりたいと思うんです。
▼「イベント」というリアルな場の大切さ。そこで生まれるもの。
I:僕たちの世代というのは、イベントのような「リアルな場」についてのこだわりや、価値を重視する傾向があると思います。それは、自分自信が「リアルな場」で学んだことがあって、そこから進歩してきた実感がある。今、あまりイベントがないのは、そういったイベントの魅力の次世代への継承というか交代がないからですかね。
K:僕は世代論というのは好きではないんです。ただ、今回イベントづくりを再開した中で、昔は無くて今はある気持ちというのがあります。それは、札幌でこういった活動をするDNAを残したいな、という気持ちです。そういう想いは昔活動していた頃には全然無かったんですが(笑)。
I:たしかに、他人の主催するイベントを観に行ってみて、それに刺激を受けて、自分でもやってみよう!というのはありますね。それによってDNAが継承されるのかもしれないですね。そういう刺激はネット上より、イベントのほうが強そうですね。
K:だけど、僕はそれで後輩を育てる!みたいなおこがましい事を言うつもりは全く無いですし、そういうことを全面に出すような押し付けがましいことはしたくない。断絶した世代間格差を埋めようとも思わないし、昔やっていた人間がまた本気を出す!というのもちょっとカッコ悪いのでやりたくない(笑)。 先に話したとおり、このイベントをきっかけに札幌のエレクトロニカやアンビエントの「シーン」づくりに役立てばいいな、と思うだけです。 このイベントをきっかけに、Vertical Horizontalで扱う様な音や映像に接してもらったり、いろんな世代の人達と交流できれば嬉しいな(笑)という気分です。その結果、次の世代にDNAが残せればいい。
▼ Vertical Horizontal とは?
I:イベントで若い世代と交流を持つのは、いろいろなヒントにもなりそうですね。では、そろそろ具体的なイベントのコンセプトを話してくれますか。
K:エレクトロニカ、アンビエントと呼ばれる電子音楽とVJによる映像を主体としたライブイベントです。先にもお話しましたが、こういった音楽や映像が好きな人、興味のある人に対しての接触機会を増やす、というのが最大のコンセプトですね。更には、このイベントがキッカケで、自分でも音楽や映像を作ってみよう!という人が増えてくれたら良いなぁとも考えています。そのあたりを自然にできる雰囲気が作れればいいと思っています。あと、「Vertical Horizontal」はシリーズとして、年に2~3回のペースでやっていきたいと思ってます。
I:シリーズでやるの大変かと思いますが、そこに、こだわりがありそうですね。
K:はい。「シーン」づくりに役立ちたいと思うなら、単発的ではなくて、継続性を持って回数を重ねないとダメだと思うのです。だから、運営スタッフの中で、もう2回目や3回目のイベントの企画も考えてます。
▼ 会場とVertical Horizontal
I:今回の会場は、CAI02というギャラリーカフェというのもユニークですね。
K:会場選びというのもコンセプトとして大切にしたい。だから、クラブや一般的なライブスペースはできるだけ避けようと思ってます。理由としては、そういった場所でやるイベントは既に他にあって、それと似た様なことをやるのは僕らの役目ではないると思っているので。別に何が何でもクラブでやらない、という訳でもないですが(笑)。
I:クラブ以外のスペースでやるというのは、そういった空間に馴染みのない人にも来やすいと思います。また、クラブ空間に慣れている人は新鮮な印象を受けるでしょうね。
K:シリーズでやるので、毎回テーマを変えてやっていきたいし、それにあわせて会場も毎回変えたいと思ってます。実は、もう次回以降の会場の候補もあって、かなり意外な会場の予定はあります。また、「Vertical Horizontal」はイベントだけ、という訳ではなくて、重ねて続ける中で、例えば音源のリリースだとか、他にもいろいろな企画を展開もできればいいなと思ってます。
I:では、最後にひとこと。
K:最近ですね、複数の東京の方に「北海道のアーティストの音には北海道らしさがある」という感想を聞きました。電子音楽みたいなジャンルのサウンドの中にも「北海道らしさ」や「カラーのようなもの」があるということなんです。正直、この土地で生まれた僕には、その「らしさ」は全然わからない(笑)。でも、そういう何かがあるのは本当みたいなんです。だから、「Vertical Horizontal」というイベントの中で「北海道らしさ」というものも醸し出していければいいな、と思っています。
Vertical Horizontal #01
日時: 2014年04月26日
時間 :開場 17:30 開演 18:00
会場 : CAI02(札幌市中央区大通西5 昭和ビルB2)
料金 :¥ 1,500 (w/1drink) ★学生料金(学生証必要): ¥500 Yen (w/1drink)
Web :http://vertical-horizontal.com
出演:
Akko (from Tokyo)
Junichi Oguro
Anokos×Yasushi shoji
Y:E:T performed by sanmi Shunsuke
Minami Takeko Akamatsu (a.k.a Craftwife) (from Ogaki)
Beatimage
Naotone
wajima
and more…