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NEWS No.16001 経塚真代「見ているのか見られているのか」

2016.01.07

経塚真代

NUMERO DEUX NEWS 16001
札幌のアートなニュース。

過去を向合うためのメディア。
そこにアートの役割はとても高い。

年が明けて外は雪。仕事はじめまでの短いひととき。そんな時は、おうちで今年の目標でも決めようか、なんて気分になる。未来を考えるには、過去をふりかえなければならならい。自分の過去は、自分、または他者の心の中に、または今の時代、パソコンの中に、スマートファンの中に、またはネットの中にもある。ただ、それはただの事実にすぎない。そこにあるだけ。過去は思い出され、そして「自分が受け入れられて」はじめて過去になると思うのだ。

僕はどんな時に過去を思い出すのだろうか。そして、思い出した過去を「受け入れる」には、なにかが必要なのだ。過去は「自分のもの」として理解しなければ、それはきっと、ないと同じことではないかと思う。逆にいえば、過去とは「自分のもの」(=受け入れる)にしなければ、ないことにもできると思う。

経塚真代は造形作家「1978年生まれ。札幌出身。札幌大谷短期大学 美術科 油彩コース 専攻科卒業。CAI現代芸術研究所11期生。なんとなく切ない…どこか謎めいた…あの子の悲しみをコンセプトに制作しています。」とのこと(経塚真代ウェブサイトより)

今回の作品は、展示空間につくられら2つの人物のような作品を中心とした立体作品。それは、不思議であり、ユーモラスにも感じられる。そして、同時の非常にストイックな印象も受ける。過去をテーマにしているということだ。作中には抽象化された人(ドラマ)と宇宙(空間)が描かれて感じがした。過去とは、事実を重ねた客観性の世界に思えるが、実は同時に主観的でもいえる。過去の事実は動かせないが、過去に対する主観は変化していく。そのため、過去を少し悲しかったことも、後には少し笑えることになることもある。逆に、過去に嬉しかったことも、今は少し後悔を感じることもある。本作品には、非現実な出来事から現実をふりかえるひとつのメディアとしての役割があると私的に感じるのだ。

公共空間にある展示場所という極めて現実的な空間の中で、本作品を観る。すると自分の中で一時停止が押されたような気がする。そして、本作のテーマが過去だと知った時に、そこから巻き戻しがされ、ランダムに思い出す過去。作品に描かれる人(のような)フォルム。本作品と自分との静かな交流の中には、本作品の自分と自分の過去とむきあうメディア性があったと重ねて思う。

そのプロセスで思い出す過去が「自分のもの」になった時に、過去は現実になるのかもしれない。その引き金としてアートの役割もあるし、本作はそんな作品ではないかと思う。作品から僕が感じるクールな感覚は、過去に対する客観性を僕に与えてくれて、過去へのアクセスをしやすくしてくれた。主観を動かすアートというのはとてもいい。ありがとう。

会場の JRタワーアートボックスとは、JR札幌駅構内ともリンクする、パブリックな空間。人の行き来する場所の壁面にあるアートスペースで、誰でも観ることができる。本作品をみるために、または。札幌駅に立ち寄った際に観てみてはどうだろう。都市の中にある、作家の世界を味わって欲しい。

Text by メディア・プランナー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

経塚真代[見ているのか見られているのか]
会期:2015年12月1日(月)〜2016年2月29日(月)8:00-22:00
会場: JRタワーアートボックス(札幌駅JRタワー1階東コンコース)

 

 

 

 

 

 


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