NUMERO DEUX NEWS 16014 札幌のアートなニュース。
消えていくアート。
残る記憶
消えていくから、記憶に残ることもある。自分の過去とは消えていくものだと思う。過去は「記憶」にだけに残ることもある。記憶とは曖昧なもので、それが真実だとも限らない。過去は現在には存在しない。存在するのは「過去の記憶」。僕たちは未来にも過去にも生きられない。許されるのは現在に生きることだけ。でも、過去の記憶や未来へのビジョンが心になければ生きるのは難しい。
折笠恵子は、キャンドル・アーティスト。北海道の自然現象をモチーフにしたキャンドルの制作。また、アイスホテルの空間演出や映画の美術協力等「キャンドル」という素材にとらわれない活動をしている。彼女にとってキャンドルは、表現のためのひとつの方法だと思う。
キャンドル・アートは、その表現物はその名のとおりロウソク。それには火をつければ美しい炎で、まわりを照らす。でも、その過程で作品は失われてしまう。つまり、使うと失われてしまうアート作品なのだ。僕もキャンドル・アート作品を持っている。使うのがもったいない。それでも時々火をつける。すると、炎と香り、減りながら変形していくキャンドル。そこにキャンドル・アートの魅力がある。使って失われていくアート。失われるがゆえに美しく、そして記憶にも残る。今回の展示ではこうしたキャンドルの持っているクールな寂しさが魅力。失われるがゆえ記憶に残ること。そして、最終的には失われてしまっても「人の記憶に残る」こと。それが実は一番いい事なのではないか。そして、本展示作品には人の記憶に刻ませる魅力がある。
会場のクラークギャラリー+SHIFTは、札幌中心部にある観光スポットとしても人気のある二条市場のあるエリア内にあるギャラリー。 北海道のクリエイティヴなアイテムを集めたお店MUSEUMの2階にある。そして、この建物も大正時代につくられた古民家をリノベーションした建物である。この建物を観るだけでも札幌の古い建築物を鑑賞できるスポットになっている。
Text by 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
折笠恵子 個展「ASPECT」
会期:2016年2月3日(水)~28日(日)
時間:11:00~19:00(月曜日・第3火曜日休廊)
会場:クラークギャラリー+SHIFT(南3東2 MUSEUM 2F)
http://www.clarkgallery.co.jp