札幌ビエンナーレ・プレ企画
実行委員インタビュー003
プレ企画副実行委員長: 中森 秀一(なかもり・しゅういち)
札幌初の国際的な芸術祭「札幌ビエンナーレ」を2014年開催実現のために有志による「札幌ビエンナーレ・プレ企画実行委員会」が結成され、第一弾として、今年4月に北海道立近代美術館で9日間(4/2-4/10)展覧会が開催される予定だ。
今回は副実行委員長の中森 秀一(建築家)にお話を聞いてみた。その中で一番注目すべき情報として
今年11月に札幌芸術の森美術館にて開催されるプレ企画の第二弾について興味深い情報を教えていただいた。それは「全方位」というコンセプトに通じる、国内でも初となるコンセプトの美術展が開催されるようだ。
『北海道はよく特色は食べ物とか、自然が注目されるけど僕は自由で新しい表現ができる「精神性」も特色なんじゃないかと感じる。』
『アウトサイダーアート(知的障がい者の作品)という言葉を無くして、みんな一緒で「いいものはいい」という考え方で美術展をやりたいと思った』
Interview with Shuichi Nakamori
「僕はプレ企画実行委員の副委員長で、全体を総括して進行管理をしています。簡単にいえば、進み具合を見て「遅いぞ!」と文句をいう係(笑)。皆の憎まれ役を買ってるつもりです。なぜなら、こういった大きな企画は、みんなでなぁなぁでやってはうまくいかない。約束事を守って、できるだけ予定どおりに進めていくのがとても大事なんです。今の状況としては4月の近美での企画にむけてフライヤーのデザインやチケットの販売体制を進めています。全体の4割くらいが決まりつつあります。まずまず順調に進行していると思いますよ。
次にお話ししたいのは、私の発案で11月に札幌芸術の森美術館で開催されるプレ企画の第二弾のひとつに、アウトサイダーアートと呼ばれる知的障がいのある作家の作品展示をすることです。それはなぜか?今からお話していきますね。これは札幌ビエンナーレ・プレ企画のコンセプトにもつながるものだと僕は思っています。話はさかのぼりますが、93年に東京の世田谷美術館で「パラレル・ヴィジョン」という企画を観ました。それは出品作家は、みんな知的障がいのある方で美術界では「アウトサイダーアート」と呼ばれるものでした。僕はこの美術を初めて観てえらい衝撃を受けましたね。こういうジャンルがあるんだと。これだけ文化や芸術が越境して垣根のない世の中になっているのに、アウトサイダーアートというふうに分けることはナンセンスなんじゃないかな、と考えた。これを壊したい、アウトサイダーアートという言葉を無くして、みんな一緒で「いいものはいい」という考え方で美術展をやりたいと思った。それが札幌ビエンナーレ・プレ企画のコンセプトである「全方位」にも通じるものだと僕は思っている。
11月の芸森では、今、話した私の想いに基づく障がいのある作家の作品展示をやります。ただ、それは看板としては出さない予定です。プロフィールを見たらわかる、という程度にとどめて他の現代美術作品と一緒に展示したい。そして同時に必ずやりたいのは、この展示をテーマにしたシンポジウムの開催。この企画には僕は一番燃えています。ビエンナーレ・プレ企画第二弾のひとつの重要な柱になると思う。道外よりゲストキュレーターとして、はたよしこさん、小出由紀子さんにご協力いただく予定です。ふたりともアウトサイダーアートについて第一人者です。
北海道には細かいところにはこだわらない大陸的な良さがある。こうした企画をやるのに国内ではふさわしい土地なんじゃないかな。北海道はよく特色は食べ物とか、自然が注目されるけど、僕は自由で新しい表現ができる「精神性」も特色なんじゃないかと感じる。この企画が「北海道だからできたんだ」といわれることが、とても重要な意味があると思ってます。」
Photograph & Text by Shinichi Ishikawa (NUMERO DEUX)