NUMERO DEUX NEWS 16025札幌のアートなニュース。
ロードコーンは、どんな夢をみるのか?
無機から有機が生まれるとき。
テクノバンド、クラフトワークのアルバム「 kraftwerk」のジャケットをながめる。そこには、ロードコーンがひとつ大きく描かれている。それは、私達にもお馴染みの工事現場、道路等に置かれる円錐形の目印。テクノというポップミュージックの大変革をもたらした作品のビジュアルイメージが、なぜロードコーンだったのか?アルバムを聴きながら、それを考えるのも楽しい。工事現場等にある大量生産品。うまくは説明できないけど、クラフトワークの音楽とロードコーンの組み合わせは、実に似合っていると思う。ロードコーンとは無機的な3次元のメッセージ。立体のピクトグラム。その内容は「注意」。ただ、その存在は「仮設」であること。そして、どこかポップ。
本展示はアーティストKit_A(北芳樹)によるロードコーンをテーマにした映像作品。札幌市内を携帯電話で撮影したものを素材をした映像インスタレーション作品となっている。作品を眺めていると、ロードコーンにもいくつかのタイプがあるのが分かる。また、置かれた場所もさまざま。でも、その存在感はいつも一定。ただ、どんな場合でもロードコーンは、注意すべき存在であり、同時に風景にとけ込んでいく。そんな独特の存在感に着目したKit_Aの視点は鋭い。誰もが知る存在に、アートの視点を加えるのは、現代美術の正攻法だと思う。
ロードコーンとは何なのだろう?それは現在では本来の機能を超えて、私達の心を動かす不思議な存在になっていると思う。そして、いつもまわりに存在するのだ。誰もが、自分とロードコーンとの関係性を考えることができる。本展示を見ると現代アートの基本的な考え方を学べるのではないだろうか。僕は時々、少し破損したロードコーンをみかける。それもなぜか魅力的だ。
Text by 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
「アートボックス Kit_A(a.k.a.KITA Yoshiki)[Around the Roadcones]」
会期:2016/03/05(土) ~ 2016/05/31(火) 08:00~22:00
場所:ARTBOX(JRタワー東コンコース)