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NEWS No.16035「上原美智子『あけずば織』展」

2016.06.29

上原美智子2
NUMERO DEUX NEWS 16035

 札幌のアートなニュース。

つつまれていく気持ち
布と生きる。生きていく。

すべてはついてまわり、すべてはついてくる。「布」は僕たちの生活に密着している。それは、観念的にも現実的にも。例えば、ふきん、カーテン、ベッド…キッチンにリビングに寝室に布はある。そして、一番大事な布がある。僕たちは生まれた直後から衣服という「布」に包まれて生きている。布のない生活は考えられない。テクノロジーが発達した現在でも布にとってかわられたものは意外に小さい。布の種類もさまざまだ。化学繊維も普及しているけど、僕はできるだけ、機能性よりも自然から作られる布の肌触りを好む。上質の布の肌触りは安心感と、美に対する気持ちよさを生む。これはとてもアート的で、同時に肉体的なことだ。つまり良質の「布」とは芸術であり、生き方に寄り添う。

上原美智子は染織家。1949年沖縄県出身。東京で柳悦博氏の下で織物を始め、その後沖縄に戻り大城志津子氏に伝統的織物の技術学ぶ。上原氏は世界でただ一人、生きた蚕の繭から糸をほどき、髪の毛の十分の一(50分の1ミリ)ほどの細さの単糸だけで手織りする技術を持つ。目に見えないほどの糸で作られた3mの布は5g程の重さしかなく「天女の羽衣」と呼ばれ、国内外から高い評価を受けている。展示名の「あけずば」とは沖縄(琉球)の古語で「とんぼの羽根」を意味し、とんぼの羽根のように薄く強いことから、あけずば織と名付けられた。今回の展示会では、あけずば織で作られたストールやテキスタイルの展示販売が行われている。

展示されている「布」を見ると、その繊細さはまさに芸術的であり、近寄りがたい雰囲気もある。でも、しばらくたつと布としての親しみやすさ、安らぎも感じられてくる。そこが素敵だ。ストールの作品を購入して身に付けることができる。それは日々の生活が楽しくなる、アートなアイテムだと思う。

Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)

上原美智子「あけずば織」展
会期:2016年6月2日(木)~7月19日(火) 11:00~19:00 最終日17時迄)
会場:グランビスタギャラリー サッポロ(札幌グランドホテル1階ロビー)

 

 


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