SapporoArt Scene Repo Dec.2011
定まらない音楽の魅力
ジョン・ケージ生誕100周年記念プレ・コンサート@札幌
John Cage 100th Pre-Anniversary
2011/12/10/(sat) Open:19:00 Start:19:30
会 場:札幌大谷学園 百周年記念館同窓会ホール(北16東9) / 料金 2,000円
出演:小山隼平(ピアノetc .)/向山千晴(コンピュータetc .)/前川原雄太(パーカッション)
/渡部倫子(コンテンポラリーダンス)
来年2012年はジョン・ケージ生誕100周年だそうだ。ああ、そうなんだと思う。そういわれると凄い古い人みたい。だけど、良くも悪くもケージの提示した表現はまったく古くなっていない。ホントいつになったら古くなるのだろうと思う。古くならないとは確定しないということであり、それはゆらゆらしたもの。天国のケージもそんな状況を落ち着かないか、微笑しているだろうか。
ケージに対するゆらゆらをまだ僕らは捉えきれていないし、捉えるにはまだまだ時間がかかりそうだ。それまでは、ケージが考えた音楽を体験できる場をできるだけたくさん用意していくのが大事だろう。義務教育のカリキュラムにも取り入れて欲しいなぁ。ケージの思想は音楽だけでは納まらない、考え方の訓練になるのではないだろうか。
市内の大学のホールにて、ジョン・ケージの作品演奏が行われた。僕はケージのコンサートは初めて。ネームバリューの割にはなかなか体験できる機会は少ない。市内の大学内の会場は思ったよりちいさくて、心底「良かった」と思った。ケージの作品を遠くから眺めるの嫌だった。このあたりはロックのライブに似てる。ケージはロックだ、なんて語るの普通にカッコ良すぎるので書きませんが(書いているけど…)。
演奏が始まる。ピアノの鍵盤を閉じたままの曲、ラジオを使った曲、トイ・ピアノやベルを使った曲などなど。知識としては知っていた。重要なのはコンセプトなので、実践はどうなのかしら‥体験すると案外ガッカリ、というのも考えていた。だけどそんなヤボな予想は裏切られた。最後まで緊張感が続く演奏だった。ひとつひとつの演奏者の動作に緊張感が走る。それは予定調和から遠く離れた世界だからだろう。
実験的な表現は演奏者がより真面目にストイックに取り組む必要がある。その点、演奏者たちの好演によって成功していると感じた。そこから緊張感が生まれる。それがケージの音楽の肝だと思う。本公演はインディペンデントなものであり、その企画力にも拍手を送りたい。
来年1月21日、札幌コンサートホールKitaraにてジョン・ケージの作品公演、「ジョン・ケージ生誕100年 メタミュージック(超音楽)音楽を越境した音楽たち」が開催される。これはダンサーや映像表現、インスタレーションも含めた大掛かりな企画である。そちらにも注目して欲しい。来年はケージの年だ。
Text & Photo Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX