週末。気分を変えたくてドライブをしてみる。
街をぬけて、自然の風景がひろがっていっく。その時、僕が車窓から目の中に最初に捉えるのは「木」である。風景よりも、まず個々の木の存在に目がいく。
裸の「木」の状態が僕は好きだ。きっと一般的には、たっぷり緑の葉が茂っているほうが好まれると思う。しかし、僕は秋〜冬にかけて緑を失った枝だけにむき出しの「木」が好き。僕にとって木とは緑の葉よりも、枝のみの木本体のフォルムに惹かれるの。だから、冬におけるむき出しの枝に積もる雪、枝々の後ろに広がる風景、空気感、そういったものに魅力を感じる。
思うのだ。緑に覆われた木は、おなじようなカタチに見えて、個性を失ったように見える。それは全体的な「風景」としては魅力はあると思う。だけど、僕は個々の木としては魅力は、緑を失い枝だけになった時、枝ぶりの違いが明確となり、個性が生きてくる。つまり僕は、木は緑の葉っぱの下に個性が隠されているのだ。
藤井忠行1943年生まれ。旭川在住。木を素材とした作品を多く発表している美術家である。
木を素材にしたアート作品というのは、それほど珍しくも特殊でもないと思う。しかし、多くの木を素材にした作品は、アート作品になる過程の中で「木」であることが失われてような感じが僕がするのだ。もちろん、木という素材の持っている木目の優しさ、ぬくもりは僕は感じるし、それは好きだ。ただ、それは車の窓から見える、自然という風景にある木とは、もう違うと感じる。しかし、藤井忠行の作品は木がアート表現としてどう手が加えられていても、僕の好きな「木」を感じる。そえは、木という自然の中のランドマークとして、木を作品化しているからではないだろうか。
Text by
アート・メディアライター 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
藤井忠行 励起の記述に
500m 美術館vol.22「北の脈々 -North Line2-」」
会期:2017年4月15日(土)~7月5日(水)
会場:札幌大通地下ギャラリー 500m美術館(札幌市営地下鉄大通駅内)