なぜ、今ここにいるのか?
という問に答えるのが苦手だ
なぜなら
人生について語らないといけないから
自分の記憶は曖昧で
多分、他人の記憶もそうだろう
曖昧な人間がつくった あいまいな世の中
気がつかない歴史がつくられる
そんなくらしの中で僕は石を集める
好きな石をサイドテーブルに置く
石は確実にある
石はたしかにある
記憶の目撃者
無言に隠された証明
時々、話題にしてますが僕は石を集めています。水石という分野の趣味で、川や山に石を採ってきて、加工せずに台を作ったり、水盤に置いて鑑賞する。水石の魅力はこの記事では書ききれませんが、そのひとつとして石の持っている「時間」がある。石を眺めて、自分が生まれるはるか前から存在していた石について、思いを巡らす。それはいい時間です。ただ、水石にあるのはいつも「過去」ではないかと思っている。
川上りえは1961年生。北海道を拠点とする美術家。千葉県生。多摩美術大学美術学部立体デザイン科〜東京藝術大学大学院。院終了後、北海道に移住。鉄を材に頑強な構造体の作品をつくり続けている。
本作品は僕には最初、静的な印象。だが、徐々に迫ってくる。刺激がある。ガラスを静かに突き抜けて駅構内に飛び込んでくる。駅に影響をあたえる。実態はガラスの中。影響は外=現実世界へ。
CLOUD ROCK(くもいわ)は僕に語りかける。なぜなら、金属フレームの岩は少しおしゃべりだ。現代的でスマートフォンとも相性が良さそうだ。これが多分、ガラスの中にある岩が、自然そのままの岩ならば、それはあまりに古典で過去の「遺跡」になってしまう。それはまるで水石のように。
川上りえによって金属のフレームの姿となり、現代的に再構築された岩。その結果、今の社会に語るべき「現代」「未来」をささやく、今の時代に生きるアート作品だと感じた。こういった作品がもっと公共的な場所にもっと展示されることを望む。なぜなら、そのフォルムは人の記憶にかたりかけるから。その記録がより良い社会をつくるだろう。
「川上りえ CLOUD ROCK (くもいわ)」
会期:2016/03/05(土) ~ 2016/05/31(火) 08:00~22:00
場所:ARTBOX(JRタワー東コンコース)
Text by メディアリサーチャー 石 川 伸 一 (NUMERO DEUX)
〜文化とアートとメディアについて考えて、書くのが好きです。
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