チェコの映像作家。人形アニメーションの表現を行なっている。本作はルイス・キャロルの古典的名作「不思議の国のアリス」を元に実写とアニメで「悪趣味」の世界を表現している。
「悪趣味」の表現は難しい。でも、とても価値のあるものだと思う。自分が「悪趣味」なものを作ることになったら、頭を絞らないといけないと思うし、それでも無事、表現できるかわからない。人が殺されたり、傷ついたりした表現をしても、それは「残酷」であっても、「悪趣味」ではない。単なる「残酷」と「悪趣味」との違いは、美意識があるか、ないか、だと思う。当然、「悪趣味」のほうに美意識が必要な訳だ。そして、その美意識は、あくまで人々の日常の視点から発生すべきものであり、ユーモアも感じさせるものが良いだろう。「崇高」なだけの美意識では「悪趣味」を作ることは難しい。
本作は素晴らしい「悪趣味」な世界が展開されていく。観る者に対して「悪趣味でしょ?」というおしつけがなく、自然な形で表現されるのは、作家がしっかりとした世界観を持ってるためだろう。僕もこういった「悪趣味」を表現できる「趣味の良さ」を身につけたい。
REVIEW
DVD 「アリス」(監督:ヤン・シュヴァンクマイエル)
2006.02.19