DVD REVIEW
「マネートレーダー/銀行崩壊」(1998・イギリス)
ひとりの銀行員の不正行為によりイギリスの名門銀行が潰れってしまった話。実話だそうだ。銀行員の不正行為というのは、まぁ犯罪としてはありうると思うけど、そのせいで銀行が破綻してしまったのは凄い。
犯罪発覚まではその原因となった銀行員は幹部も認める優秀な銀行員。管理職は、管理するのが仕事。会計検査員は検査するのが仕事。それらが、機能していなかった訳だ。ごくあたり前のことがおこなわれなかったから発生したミス。どんな完璧なチェックのシステム作っても、それを実行するのは人間である以上、少しでも遠慮や例外が生まれると機能しなくなる。
たしかに主人公は悪い。でも、まわりが、もっと初期の段階で発見できる不正行為ではなかったのか。まわりの人間は「おかしい」と思っていたハズだ。突出した成績。動きすぎる大金。まったく知らないというのはありえない。ただ組織の中では「まぁ、大丈夫か」と思ってしまう。それは自分についても思い当たるリアルなことである。
話はズレるが、なにかミスが発生するときに、どこかの段階で一瞬悪い予感がする時がある。後になってミスが発生した時に思いを巡らすと、ああ、あの時の予感がそうだったのか、と後悔する時がある。なにか不自然を感じたとき、そういう時は大体は走り続けたい時なのだけど、そこで5分でいいから立ち止まるべきではないか。この映画を観てふと思った。
主演のユアン・マクレガーなかなかいい、話としては暗い映画なんだけど、そこに「華」を感じさせ、本作をエンターティメントにしている。本作の若く、エネルギッシュな親しみやすいサラリーマン役がよく似合う。後半の犯罪者らしからぬリゾートな逃避行は結構おもしろかったな。