DVD REVIEW
「マシニスト」( 2004年 スペイン/アメリカ)
主人公の記憶があいまいな形で観ている側に語られる、という構成は以前紹介した「メメント」に似ている。ラストのわかりにくさも同様だが僕は「メメント」より本作がずっと好き。
すっきりとした謎解きサスペンスを期待している方にはがっかりかもしれない。しかし、僕は作品全体をとりまく雰囲気がとにかく気に入った。主人公の不眠・激ヤセというところから目前にひろがる現実・非現実なミステリアスな世界。
デビッド・リンチ的な感じもあって映像に魅力的がある。「メメント」が、どうしても主人公の「復讐」と「真相」という部分の焦点があたりすぎていてドラマの体裁としては純度の高いサスペンスぽいのに、その割にはわかりにくいラストで不満だった。対して、本作は、わかりにくいラストは同様だけど謎解きを抜きにしても、個々のシーンやエピソードにおもしろさがある。職場、自宅、遊園地、カフェ、女との時間、のどの場面でも特有の不穏な空気に包まれており、その「空気」を自分の体に吸い込むことができれば僕は満足できた。