BOOK REVIEW
J・G・バラード「コカイン・ナイト」(1996・英)
あらすじはミステリー風味だが、それを期待するとちょっと違う。謎が明かされる爽快感みたいなのは、それほどないし本質として大切ではないと思う。
それよりも、舞台全体の雰囲気を楽しむのが良いと思う。「起承転結」の外にバラードの作品の魅力がある。
僕は早速本作を2回目の読みをスタートさせた。これが本当に楽しい。読んだ直後にもう一度読み返して楽しいのはバラードの作品の魅力だと思う。
その魅力を具体的に書いてみるなら、作品の舞台となる場所の描写や、いろいろな出来事の描写だろう。緻密にリアルというより、まさに「バラード節」ともいえる独特の主観的な描写がツボにはまると最高。その分、この作家の文体は最初はクセを感じるとは思うが、少々意識して噛み砕きながら読んで欲しい。それでツボにハマればバラードの世界にようこそ。