REVIEW

静かな夜に。

2008.02.22

Yc
DVD REVIEW
「夜よ、こんにちは」(2003・イタリア)

 割安なゲオの5本レンタル。最後の一本が難しい。同じ棚を何度まわることか。最初のほうで観る気マンマンなものは選んでいるので、最後はなんでもいいかな、と思う。本作もタイトルも監督も知らなかった。
 パッケージの裏の説明を斜め読み。サスペンスっぽい内容と感じて、借りてみた。観るとアート系のドラマ作品であった。
 イタリアで実際にあった武装左翼集団「赤い旅団」によるモロ元イタリア首相誘拐事件。本作はその誘拐犯の動きを、仲間の若い女性の視点から描いていく。
 誘拐犯らはアパートを借り、隠し部屋を作り、そこに元首相を監禁する。要求を出す。世間の反応をTVで知る。そのTV映像では実際の当時のニュース映像が使われていてリアルな感触がある。ショッキングな題材を扱いながら、作品のトーンは非常に静かで暴力的なシーンはほとんどない。
 主人公の女性は飾り気がなく清楚で美しい。質素に真面目に働く女性という印象。彼女は普段は図書館で働いている。家に帰ると、仲間と監禁されている元首相がいる。彼らに食事の用意をする。食べながら、ぼそぼそとこれからのことを話す。ベットで寝る。そのサイクルで話は進む。
 主人公の女性は寡黙で、自分たちの行動(=誘拐)についての正直な気持ちというのは、最後まで明確に表現されない。ただ、ヒントは無数に隠されている。その気持ちを読み取るのが、本作の魅力ではないかと思う。
 監督は恐らく「良い」とか「悪い」というレベルの問題提起はしていない。犯罪者らを自分達と同じ人間と捉えた時、私たちはどう理解すればいいのだろうか。静かな夜にしっとりと鑑賞したい作品。

 


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