REVIEW

オヤジ行動の美しさ

2008.06.29

Kt
「告発のとき」(2007・アメリカ)

 週末。しばらく劇場で映画観てないな、と思う。午前中に歯医者さんに行って、お昼ごはん後になにか、ちょうどいい作品がないかなと思う。大丸藤井セントラルの1Fにあるプレイガイドに行く。そこには新聞の本日の上映情報が張ってあるので、そこから選んでみることにした。

 特にこれは、というのがなかったので適当に選ぶことにした。それが、「告発の時」。前売を買う。どんな映画かまったく知らない。情報は前売り券にある宣伝文句のみ。「アメリカが目を背けた衝撃作」。内容予想ができない。ただ、邦題から裁判ものかな、と。携帯でネット検索すれば、簡単にあらすじぐらい調べられる。でも、それはやめた。まったく基本知識を持たないで観るのもいいもの。結構楽しいよ。

 劇場はスガイ。お客さんはわりと年齢層高めな感じ。ロビーにバットマンの新作ポスターがあって「あっ、やるんだ」と驚く。キャスティングは「ビギンズ」を受け継ぐみたい。監督のクレジットがなくて気になる。多分同じかな。
 席に座って、上着を脱ぐ。外が暑かった。ジャケットはいらなかったかな。ロビーにある自販機のアイスクリームが食べたいなと思った。そんなことを考えていると上映がはじめる。いくつか予告が流れた。クローネンバーグの新作が観たい。本編が始まった。

 ストーリーは息子がイラクから帰ってきた。しかし、その直後に失踪。父親は、ひとりで息子を探すことを始める。狂気を扱った作品なのだけど「ひどいでしょう、ひどいでしょう」と観る側にたたみかけるようなことはしない。なんともいえない無力感がただようのみ。

 主演は、トミー・リー・ジョーンズ、愛国心のあふれる元軍人の役は、はまり役であり、同時に息子を心配する父親の役もうまく演じている。不器用そうで寡黙な雰囲気を持ちつつも、元軍警察で働いていたカンを生かして、事件にどんどん鋭く切り込んでいくあたりは、カッコいい。

 刑事役のシャリーズ・セロンもなかなかいい。スラリとしたスタイルの良い、化粧っ気のない、キャリアウーマン的な雰囲気なのにだが、交通係から刑事に昇進したものの、まわりから評価されず、さえない仕事ばかり担当させられている。幼い息子でふたりで暮らしている。個人で勝手に捜査をするトミー・リー・ジョーンズにイラつきながらも、彼の鋭さに次第に協力していくことになる。事件ドラマとして、真相が明らかになってくテンポよりも、息子を探す父親の姿というのは丁寧に追っていて、BGMが無く、派手なシーンはないが、ありきたりのシーンの中の凝った構図が印象に残る。捜査の中での脇役たちのやりとりも魅力的だ。息子の仲間の兵士から、バーで働く人とのやりとりは、地味な「息子を探す父親」として地味な見どころだと思う。

 監督は別に、最後にビックリさせようという意図で本作を作った訳ではないと思う。なので真相がわかるシーンでも、そんなセンセーショナルには描かない、尋問の数分の会話なのだけど、その中のそれぞれのキャラクターの表情がなんともいえず、気持ちを表していいて心に残る。最後のシーンはやりすぎ感もあるが、そこは監督の、もうそこまでやらなきゃならないんだ、という意図を読めて、わざとらしさはなかった。やはり、劇場で観たほうが集中できるし、気分転換にもなっていいな。


COLUMN

CATEGORY

LATEST ENTRIES

ARCHIVES

website design by shie sato

SAPPORO ART & DESIGN MAGAZINE NUMERO DEUX 札幌 アート&デザインマガジン ニュメロデュー

copyright @ NUMERO DEUX allrights reserved.
top