J・G・バラード/終着の浜辺
バラードの作品は凄い展開とか結末を期待すると肩透かしをくらう。
では、つまらない訳ではない。「結末でアッと驚く」というより「話の流れが常におもしろい」作品なのだ。
だから、結末を知ってもまた読みたくなる。本作は短編集で読みやすいので繰り返し読んでいる。バラード節の世界にハマっていく。
最初の作品「ゲームの終わり」では死刑囚と死刑執行人とのチェスと会話で進んでいく。死刑囚は自分がいつ死刑になるかわからない。無罪主張のチャンスを狙っている。
ラストは「えっ、これで終わり?」という感じなんだけど、また読みたくなる。そこがバラード。なんとも味わい深い。ラブ・ロマンスも、恋愛の駆け引きも、ノスタルジーもアクションも無い世界。心の宇宙(インナースペース)を楽しもう。