REVIEW

かわいそうすぎて…

2008.07.05

Factory_girl
「ファクトリー・ガール」(封切作品)

 スガイの8階のちいさな劇場で観る。実話で舞台は60年代のニューヨーク。世界的に有名なアーティスト、アンディ・ウォーホルに目をかけられ、モデル・女優として注目されるイーディ・セジウィック。しかし、常に新しいもの好きのウォーホルに見捨てられドラッグにハマり落ちぶれていく彼女の生涯。悲劇性ばかりフォーカスされていて、つらい話です。

 いろんな部分で説明不足かなと思った。僕のようなウォーホールのアトリエ、ファクトリーの雰囲気を味わいたいファンには物足りないし、恋愛ドラマだと思って観にきた人には、なんだかよくわからない作品だと感じるかも。

 イーディをめぐって、ウォーホールとボブ・ディランの三角関係というのは、やや強引な見せ方だと思う。現実もそんなものでもないと思うし。

 ガイ・ピアースが演じるウォーホルはかなり良い。アーティストらしい雰囲気が良く出ている。イーディ演じるシエナ・ミラーは健康的で、育ちの良さそうな感じで魅力的なんだけど、落ちぶれていった方のシーンのほうが印象が強くて、悲しくなる。まぁ、話は簡単にいえば芸能界残酷物語のような感じです。

 後半に、本当に少し(まともに写るのはニコだけ)なんだけどベルベッツ・アンダーグランドが出た時は気分が盛り上がったなぁ。まぁ、ニコの発見によってイーディとはますます疎遠になるウォーホルなんだけどね。

 ウォーホールの映画としては、メアリー・ハロンが監督した「アイ・ショット・アンディ・ウォーホル」(1996)のほうが好き。こちらも実話でバレリー・ソラナスというウォーホルを銃撃した女性が主人公でこれも悲しい話なんだけど、彼女とウォーホルのねじれた関係性や、ファクトリーに集まる連中の良くも悪くもいいかげんなところ、彼らと距離感のあるウォーホルという、とりまく環境が描かれていて立体感のあるリアルな映画だと思った。サントラの選曲も凄く良かったし。ただ、アート系映画というかウォーホルに興味がない人にはあまりおもしろくない作品かもしれないけど。

 「ファクトリーガール」の場合、イーディ自身にスポットがあたり過ぎていて、逆にほかがあまり照らされてない。それはウォーホルについても不十分、なんだか単に気が利かない意地悪な人間のようだ。やっぱり、ディランとウォーホルとの三角関係性で描こうとしたのが問題なんじゃないかなぁ。それって、多分、イーディが堕ちていくのとあんまり関係がないような気がする。
 ディランがいなくたって、イーディは同じ結末のになった可能性は高いと思うし。そう、イーディが本当に堕ちていった原因をウォーホルをふくめて、まわりの人間の性質から描いて欲しかったなぁ。ただ、実話をベースにしている以上難しい部分もあるかもしれなかったけど。


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