洋画★シネフィル・イマジカ
「心の羽」(2003年)
映画でセリフがないと、画面に集中することになる。そこで映像に見るべきものがないと、たちまち退屈してしまう。
この映画の舞台は田舎町。クラシカルな雰囲気がある訳でもないから極めて普通の町。若者なら息苦しさを感じるような場所である。
そして、登場人物のせリフは少ない。先の例からいくと不利である。
しかし、この監督はなにげないシーンも、構図や編集で気の利いた画面作りしていて、ユニークで退屈させない。登場人物達の無口さに対して、映像は常に饒舌なのがコントラストになっているのが見どころ。これが舞台が都会だったら映像がうるさくなったかもしれないけど、素直な田舎町の風景が品の良い感じを出している。また、ちょっと変ったシーンも何でもアリの都会より、自然の中のほうが生きてくる。
幼い息子を事故で失った母の事実を受け入れられない状態から再生していく話である。
ショックから立ち直るのというのはやっかいである。それはその人自身の問題であり、本人でしか解決得ないことである。「気の持ちよう」というのは、なんて難しいことか。本作を見ると主人公の女性の再生に素直に喜んであげたい気持ちになる。
お涙頂戴映画ではない。そこにリアリティがあった。
再生したい時に観るのが良い。