スピード社会。早ければ早いほどいい。その傾向はどこまで行くのだろう?スピード君は何をしたいの?それにしても機会があれば彼と会いたかった。話したかった。オープンカフェで待ち合わせをすることにした。
カプチーノを飲みながら考える。カップの泡がコーヒーに溶け込んでいく。スローライフという言葉があったけど、それは僕たちの生活のごく一部をスロー再生することだろう。映像のスロー再生の世界。その外では1秒でも早ければ喜ばれる世界が加速を止めない。
スロー再生が終われば、もとの世界に戻る。遅れた分を取り返さなければならない。早さは善。そう教えられたし、自分自身もそう思い、そうありたいと思ってきた。いや、今もそう思ってる。カプチーノを飲み干した。使わないノーカロリーの砂糖が残った。
世の中のどこかに忙しさの源があるだろうか。忙しさのコア。それは、地中か、海域かもしかしたら空中にあるのか。それを探す冒険をしたい。心にあるのか、それなら変えられると思う。来週末にでも旅に行こうか。いや、準備に時間がかかるので来月になるかも。バッグも買わなきゃ。丈夫なやつがいい。
風は静かに流れていた。1000年前も、この風はここを流れたのだろうか。心地よい光が、少し遮られた。今と昔、何があったのか。「お待たせしました」。影が実体となり視界に入ってきた。スピード君の座った丸いチェアには、不機嫌そうな自分が居た。