REVIEW

2009.07.31

Mt洋画★シネフィルイマジカ
「皆殺しの天使」(1962)

 不条理を普通に描くという作品が好きだ。今の自分としては、アバギャルドなアバギャルドな舞台設定の作品より、奇妙なことは日常の中に巧みに差し込まれるほう
が、より奇妙な印象が強まる。そういった作品をもっと観たいと思う。

 ルイス・ブニュエルといえば、サルバドール・ダリとの共作映画「アンダルシアの犬」が有名。この作品はまさにシュールレアリズムを映像化したものであり、冒頭からして、非日常で、非現実な場面がシャワーのように続いていく。まさに、アバンギャルドの中のアバンギャルドがあった。

 しかし、本作は舞台は、ブルジョア達のパーティという、ある意味とても平凡な設定。話としては彼らは、唐突に屋敷から出られなくなってしまう。その理由については明確な説明はなく、なんら特殊効果的な演出もない。彼らは精神的な拘束を受けて、屋敷から出られなくなる。その不条理。非現実感。シーンの撮り方は必要以上に凝る訳ではなく、淡々と彼らが困り果てる様子を描いていく。パニック映画ともいえる状況を、煽ることなく描いていくところに本作の妙味がある。


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